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2011年12月26日月曜日

232 必要な幼子 (12/24)

エレイソン・コメンツ 第232回 (2011年12月24日)

今日のニュースでは四六時中(しろくじちゅう),世界とりわけユーロランド “Euroland” (訳注・欧州統一通貨ユーロ “Euro” を共通通貨として採用している国々により形成される通貨圏)の金融・経済危機の話で持ちきりです.オランダのコメンテーター(courtfool.info)が自国向けに,バンクスターたち(訳注・ “banksters” 悪徳銀行幹部)の手から国家の貨幣 “State money” を取り戻そうという,古典的な解決策を提案しています.クリスマスのひとときにこのような金銭問題を考えるのは奇妙に思えるかもしれませんが,この問題全体は一見良さそうな解決策がみな本当に役立つ解決策かどうかという点に尽きるのです.

ユーロが多種多様な欧州諸国に政治統合を強制する手段として積極的に設計されたものでない限り,それは非常に異なる国々の経済の共通通貨としては最初から欠陥(けっかん)があったということになります.そもそもユーロ共通通貨制度は確かに貧しい加盟国には借入・支出,すなわち借りては支出するということを可能にし,その一方で豊かな国にとっては輸出・融資,すなわち輸出と融資を重ねることに確実に役立ちました.だが,そのプロセス(過程)が長続きするのは不可能だったのです.貧しい国々が抱(かか)えている借金の利息をもはや遣り繰り(やりくり)することすらできなくなったとき,豊かな国々もまた愚(おろ)かな融資をしてきた自国の主要銀行の倒産によって経済が麻痺(まひ)する危険に脅(おびや)かされる羽目(はめ)に陥(おちい)りました.

現在,欧州委員会 “the European Commission”,欧州中央銀行 “the European Central Bank”,国際通貨基金 “the International Monetary Fund (IMF) ” が協力して緊急資金を提供しようとしています.別な言い方をすれば,負債の問題をさらなる負債で解決しようというわけです.だが,お手上げ状態の負債国が資金を受けるには国際的な管理機構の指示に従うことが条件となっています.統治能力が益々(ますます)弱まってきている各国政府は支出を削減(さくげん)するよう求められるでしょう。財政的に豊かな国はどうかといえば,こちらもまた自国の主要銀行が行った愚かな貸出から生じた損失を補(おぎな)うため歳出削減をして不人気とならざるをえないでしょう,とオランダのコメンテーター,デ・ルイター氏 “Mr.de Ruijter” (訳注・オランダ語読み「デ・ロイトル」)は述べています.

さて,同氏の示す解決策に戻ります.彼はきわめて簡単な解決策だと言います.早晩消える定めにあるユーロに数十億もつぎ込み,国際機関に歳出削減を押しつけさせる代わりに,「私たちは国家の通貨を導入すればいいのです.」これは,いまや世界のほとんどの国で民間の支配下にある中央銀行に国有銀行 “State bank” が取って代わるということです.国有銀行にのみ通貨発行の権限を認めるのです.すべての融資は国家の通貨で提供します.あらゆる私有,非国有銀行には希薄(きはく)な空気から融資残高を造り出すのを禁止します.言い換えれば小額準備金銀行制度 “fractional reserve banking” を禁止するのです(エレイソン・コメンツ第224回をご参照ください).非国有銀行は提供するサービスの手数料を受け取るのは構(かま)いませんが利子を取るのは認めません.これが同氏の解決策の概要(がいよう)です.

では,誰がその国有銀行をコントロールするのでしょう? デ・ルイター氏は「国有銀行は財務大臣の管轄下に置き,議会がコントロールする.適格者で構成する委員会が通貨制度の長期的利益を監視する」と,書いています.

なかなか結構です.だが,デ・ルイターさん,誰が「適格者」の養成にあたるのでしょうか? 彼らはどのような学校で公益を忠実に守ることを学べるでしょうか? バンクスターたちに巧(たく)みに買収されるのを防ぐため彼らにどれほど強力なモチベーション(=動機付け,意欲,やる気,自発性)を与えられるでしょうか? それは民主主義でしょうか? 欧州を現在の惨状(さんじょう)に陥(おとしい)れたのはまさしく民主主義です!

本当に役立つ完璧(かんぺき)な解決策は一つしかありません.それはベトレヘムの飼い葉桶(かいばおけ)に生まれた神の御子 “the divine Child in the Crib of Bethlehem” です.親愛なる読者の皆さま,クリスマスおめでとう.(クリスマスカードを送ってくださったすべての皆さまありがとう.そして,カードを頂けなかった皆さまにもありがとう!).

キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて.
リチャード・ウィリアムソン司教

* * *

2011年11月30日水曜日

227 金融問題の解決 (11/19)

エレイソン・コメンツ 第227回 (2011年11月19日)

現在,多数の評論家が世界の金融システムが崩壊の瀬戸際(せとぎわ)にあると書いたり述べたりしています.その時がいつ来るのか誰もはっきり分かっていないようですが,多くはそれがとてつもない崩壊(ほうかい)になるだろうと予測しています.だが,2008年に金融危機が起きる前は,その到来(とうらい)を予期していた人はごく少数でした.人々はしっかり根付いていて前進あるのみと思えていた自らの生活様式に満足していたからです.しかし,評論家の言うことが正しいとすれば,崩壊は間もなく起きることでしょう.

私たちは皆,一体なにが間違っていたのか,どうすればそれを正せるのかを改めて考えてみるべきです.以下にご紹介するのはバーニング・プラットフォーム “Burning Platform” というウェブサイトに最近掲載された記事から抜粋(ばっすい)した実務的な提案です.私は必ずしも皆さんが個々の提案に賛同し,私たちの壊(こわ)れてしまったシステムにとって代わるものが何かを考えるべきと言っているわけではありません.提案は政治にかかわるものと金融にかかわるものに分かれています.金融の方から始めます:--

*「破たんさせるには大きすぎ」 ( “Too Big to Fail” ),それゆえ国を盾にとり身代金(みのしろきん)を要求する “hold the State to ransom” ような銀行はすべて国営化すべきです.その結果生じる損失は責任者,当事者が払うべきで,納税者に負わせるべきではありません.
*(米国の)グラス・スティーガル法 “the Glass-Steagall Act” を復活させ,銀行が再び巨大化するのを防ぐべきです.
*営業・会計規則に望ましい基準を再設定し,銀行が自ら保有する資産価値が市場価値を上回るように見せかけることをやめさせるべきです.
*デリバティブ市場 “the derivatives market” を規制し,金融機関 “financial entity” が巨大化することでひとたびそれが破産するとシステム全体が崩壊するようになることを防ぐべきです(かつての米国で AIG の破たんで同じようなことが起きました).
*現在のわずらわしい所得税 “income tax” 制度を簡素化するか廃止し,消費税“consumer tax” に一本化すべきです.そして,法人税の節税措置 “corporate tax breaks” を廃止すべきです.

提案はいずれも直接的には金融にかかわるもの “…such proposals may be explicitly financial,” ですが,間接的には政治にかかわる “are implicitly political,” 点にご留意ください.というのは,提案の実現には国民全般,とりわけ指導者の政治的考え方が大きく変わることが必要だからです.( “…because to be put into practice they would need a significant change in the political way of thinking of the people and especially of the leaders”.)金融は政治いかんで決まります. ( “Finance depends on politics.” ) つぎに,明らかに政治にかかわる提案を見てみましょう.中には反論を呼ぶ提案もありますが、少なくとも正しい方向を示しています:--

*あまりにもうまくやっている政治家の腐敗(ふはい) “the corruption of too comfortable politicians” を食い止めるため,彼らの任期に厳しい制限をつけましょう.特殊な利益団体による選挙の腐敗 “the corruption of elections by special interests” を食い止めるため,陳情(ちんじょう)やロビイスト “lobbyists” を排除しましょう.
*中央銀行が持つ力 “the power of the central bank” を弱めるため,国の通貨供給 “the nation’s money supply” をコントロールする権限を取り上げましょう.
*米国の福祉給付金制度 “welfare benefits” を再編成すべきです.現在の制度は国の財政 “States’ finances” を急速に枯渇(こかつ)させており,このままでは将来だれの役にも立たなくなくなるでしょう.
*お金や物がなくとも楽しくやっていくよう,生活水準の低下 “a lower standard of living” も受け入れるよう国民を再指導しましょう.そうすれば社会を食い潰(くいつぶ)して無に陥(おとしい)れる “spending society into oblivion” かわりに貯蓄によって社会を立て直す “build it by saving” ことができるでしょう.
*郊外へのスプロール現象 “suburban sprawl” をより自給可能な居住区 “more self-sufficient communities” で代替させるべく実行可能なことから始めましょう.
*たとえば世界各地の軍事基地に駐屯する数万もの兵士を引き揚げることで “by bringing thousands of troops home from their bases all over the world”, 米国の巨額な軍事費 “the enormous military spending of the USA” を削減できるようにするため世界帝国の考え方を放棄(ほうき)“Renounce world empire” しましょう.

もう一度繰り返しますが,こうした提案が実現するには,人々,とりわけ指導者たちの考え方が大きく変わらなければなりません “…they require great changes in the people’s way of thinking, especially in that of the leaders.” . 政治家が何を決定するかはその国の国民がなにをもっとも価値あるものと考えるかによって決まります “Political decisions depend on what people value more, or most.” . 私たちが生きるのはなんのためでしょうか? “Why are we alive ?” この世で楽しむためでしょうか,それとも永遠に続く真の幸福のためでしょうか? “To enjoy on earth, or to be truly happy for eternity ?” この質問への答えは二者択一(にしゃたくいつ)でしょうか? “Is that an either-or question ?” 永遠とは存在するのでしょうか? “Is there an eternity ?” こう考えてくると,政治は宗教によるか,あるいは宗教の欠如(けつじょ)によるところ大です( “Thus politics depend on religion, or on the lack of it.” ). 今日起きる金融制度の崩壊がはたして人々の目を覚(さ)ますことになるでしょうか? (訳注後記)

キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて.
リチャード・ウィリアムソン司教


* * *

最後のパラグラフの訳注:

原文・“Will today even a financial crash bring anyone to their senses ?”
「今日の金融制度の破綻(はたん)をきっかけに,人々が正気に返る(迷い〈迷夢〉から覚める)でしょうか?」

(解説)

◎「拝金主義」は競争と不安の種であって,最終的に誰をも幸福にしない.

◎ 人間の真の幸福は「平和な(安らかな)心や精神状態」のうちに存在するのであり,それは現世でも来世でも同じことである.

→ 新約聖書・マテオによる聖福音書:第6章19-34節参照.
THE HOLY GOSPEL OF JESUS CHRIST, ACCORDING TO ST. MATTHEW, 6:19-34

天の宝(6・19-21)
『自分のためにこの世に宝を積むな.ここではしみと虫が食い,盗人が穴をあけて盗み出す.
むしろ自分のために天に宝を積め.そこではしみも虫もつかず,盗人が穴をあけて盗み出すこともない.
あなたの宝のあるところには,あなたの心もある.』

清い目と心(6・22-23)
『*¹体の明かりは目である.目がよければ全身が明るい.目が悪ければ全身が闇(やみ)の中にいる.あなたの内の光が闇ならその闇はどんなに暗かろう.』

二人の主人,思い煩い,摂理(6・24-34)
『*²人は二人の主人に仕えるわけにはいかぬ.一人を憎んでもう一人を愛するか,一人に従ってもう一人をうとんじるかである.
神とマンモンとにともに仕えることはできぬ

だから私は言う,命のために何を食べようか,何を飲もうか,また体のために何を着ようかなどと心配するな.命は食べ物にまさり,体は衣服にまさるものである.
空の鳥を見よ.播(ま)きも,刈(か)りも,倉に納(おさ)めもせぬに,天の父はそれを養なわれる.あなたたちは鳥よりもはるかに優れたものではないか.あなたたちがどんなに心配しても,*⁴寿命をただの一尺さえ長くはできぬ.

なぜ衣服のために心を煩(わずら)わすのか.
野のゆりがどうして育つかを見よ.苦労もせず紡(つむ)ぎもせぬ.私は言う,ソロモンの栄華のきわみにおいてさえ,このゆりの一つほどの装(よそお)いもなかった.
*⁵今日は野にあり明日はかまどに投げいれられる草をさえ,神はこのように装おわせられる.ましてあなたたちによくしてくださらぬわけがあろうか.

信仰うすい人々よ.何を食べ,何を飲み,何を着ようかと心配するな.それらはみな異邦人(=神を信じない人,神の摂理に信頼しない人)が切に望むことである.

天の父はあなたたちにそれらがみな必要なことを知っておられる.
だから,まず神の国とその正義を求めよ.そうすれば,それらのものも加えて与えられる

明日のために心配するな.明日は明日が自分で心配する.一日の苦労は一日で足りる.』

(注釈)

*¹ (22-23節) 明かりが全身を照らすのと同じく,内なる目は人間のすべての行為を照らす.内なる目が欲望にくらまされているならば,人間の道徳生活は闇(やみ)である.

*² 富を有して神に仕えることもできるが,富の奴隷になれば神に仕えない.

*³ マンモンとはカルダイ語で富のこと.

*⁴「身の丈(たけ)」という訳もある.

*⁵ (30-34節)イエズスは将来への予備と働きを禁ずるのではない.ただ摂理(せつり)への信頼を裏切らせるほどの思い煩いを禁ずる.

「摂理」について
・=神.天地の創造主たる神が,神の法(=神の十戒・自然法=慈愛・正義・生命の法.)において永遠の計画と配慮のもとに万物を支配し治めておられることを指す.
・「神意,神のみ旨(むね),神の御意志,神の御心」
・Providentia divina(ラテン語),Providence(英語)

◎ 限界のある人間の力だけで,あくせくかき集めようとしたり,欲を張ったりせずに,人間の創造主であられる無限(=永遠)の父なる神に信頼し,真面目に善良に,正しく慈悲深い行いを心がけて生活をするなら,必要なものは全て神から必ず備えられる.
なぜなら,神はすべての人間の天の御父であられ,どんな人間をも(善人をも悪人をも)愛しておられるからである.人間が地上に生きる限り,たとえどんな人であっても神は決してお見捨てになることはない.
神を愛しその御子キリストの名を信じる人は,永遠の生命をすでに現世で持っている(ヨハネ聖福音書:第1章12-13節,ヨハネの第一の手紙:第5章13節参照).
限りある現世で善良に生きた人には,限りのない来世で神がその霊魂を引き取られ,永遠の至福をお与えになる.

◎ したがって,人間の真の幸福追求の目当てとしては「拝金主義」(=「すべて金〈カネ〉次第」とか,「金を目安に決めること」)は見当違いな手段である.

* * *

→ 旧約聖書・詩篇:第127篇参照.
THE BOOK OF PSALMS, PSALM 126

摂理によりたのむ

『*¹上京の歌.ソロモンの作.
主が家を建てられないなら,
それを造る者の働きはむなしい.
主が町を守られないなら,
番人の警戒はむなしい.

早く起き,寝るのを遅らせ,
労苦のパンを食べることもむなしい.
主は愛する者に,それを与えられる,
彼らが寝ている間に


見よ,子らは主の贈り物,
胎の実は主の報いである.

若いときの子らは,
つわものの手にある矢のようだ.

幸せなのはその矢で,
矢筒を満たした者.
*²門で敵と争うとき,
彼らは恥を受けない.』

(注釈)

神の助けがなければ,人間の労苦といえど何一つ実をもたらさない

*² 町の門では裁判や話し合いが行われていた.

* * *

→ 旧約聖書・格言の書:第10章参照(抜粋).
THE BOOK OF PROVERBS,
THE PARABLES OF SOLOMON, CHAPTER 10

『不正な方法で得た宝は身のためにならぬが,
正義は人を死から救い上げる.』 (2節)

『神は正しい人の望みをかなえ,
悪人の欲望をとげさせない.』 (3節)

『怠け者の手は人を貧乏にし,
働き者の手は人を金持ちにする.

夏の間に集めるのは利功者であり,
収穫のときに寝ているのは恥知らずである.』 (4-5節)

『正しい人のもうけは生活に役立ち,
悪人のもうけは悪事を呼ぶ.』 (16節)

『教えを守る人は生命の道を行き,
戒めを軽んじる人は道を迷う.』 (17節)

『*¹正しい人のくちびるは多くの人を養い,
愚かな人は貧しい中で死ぬ.』 (21節)

神の祝福は人を富ませ,
その上に何の苦労も加えない
.』 (22節)

『愚かな人は悪事を行って楽しみ,
利功者は知恵をつちかって楽しむ.』 (23節)

『悪人の恐れていることはその身に起こり,
正しい人の望みはかなえられる.』 (24節)

『嵐が過ぎたとき,悪人はもういないが,
正しい人はいつも立っている.』 (25節)

神は正しい人の砦(とりで)であり,
悪人にとっては滅びである
.』 (29節)

『正しい人は決してゆらがないが,
悪人は地に住めない.』 (30節)

『正しい人のくちびるは慈愛をしたたらせ,
悪人の口は悪をまく.』 (32節)

(注釈)

徳の幸福(10・22-32)

*¹ 正しい人は,自分だけでなく他人のためにも役立つ人である.

* * *

2011年11月5日土曜日

224 不良金融 -1- (10/29)

エレイソン・コメンツ 第224回 (2011回10月29日)

差し迫った世界金融の崩壊,もしくは,その崩壊が意図した世界政府設立に向けた世界金融の到来(原文 “…the advent of global finance on the way to global government which that collapse has been designed to bring on, …” )という局面を見て人々は「一体どうしてこんな混乱に陥ったのか,どうしたらそこから脱出できるのだろうか? 」と考えさせられることでしょう.もし全能の神がこのような深刻な危機に一役買っておられるのだとすれば,神は当然事態をあまり深刻には受け止められず,心地よい日曜日の気晴らし程度にお考えでしょう.だが反対に,中世の教会を建築した人たちが明らかに考えたように,神がこの危機に重要な役割を果たしておられるとすれば,神を無視することは今日のように金融が現実を打ち負かせていること(原文 “today’s triumph of finance over reality” )に大きな役割を果たしていることになるでしょう.

今日の災難がどこから始まったかを理解するには,どうしても中世時代に遡(さかのぼ)る必要があります.中世の絶頂期以降にカトリック教の信仰が低下し始めるとともに,人々は生活のもう一つの大きな動機付けである富( “Mammon”,かね)への関心を募(つの)らせるようになりました(マテオ聖福音書6・24)(訳注後記).かくして,財貨およびサービスの交換で召使("servant",使用人)の役をするはずのお金が,その本来の性質を離れ,世界経済の主("master",あるじ,主人)である近代金融へと姿を変えてしまいました.このプロセスの中で,あらゆる分野で山のように膨(ぼう)大な支払い不能な負債が発生したり,世界を目に見える銀行もしくはそれを陰で操(あやつ)る目に見えない管理者たちの奴隷にしていますが,ここでカギとなる役割を果たしているのは中世以降に広まった小額準備金銀行(原文: “fractional reserve banking” )制度です.

お金が経済に役立つとなると,賢明な国家は流通するお金の全体量を自国経済で交換される財貨の全体量に合わせて上下させ,お金の価値が安定するように努めます.財貨の供給が少ないのにお金が多すぎればインフレによってお金の価値は下がります.逆に,財貨供給が多いのにお金の流通量が少なすぎると,デフレでお金の価値が上昇します.どちらになっても,お金の価値が変動し財貨の交換を不安定なものにしてしまいます.さて,預金者がお金を預ける銀行はどう行動するでしょうか.現金( “real money” )のわずかな部分だけを準備金として残し,はるかに大量の流通紙幣( “paper money” )を支えればいいと考えます.そして,流通紙幣の量を増減させることによってお金の価値を操作し,安いお金を貸し出し高いお金の返済を求めて大金を儲けます.このようにして金融業は国家から支配権を奪うことが可能になります.

もっとひどいことに,小額準備銀行システムで銀行がお金を実社会から切り離し,それを意のままに変える( “fabricate”.=でっち上げる,ねつ造する)ことができ,さらに保有するおかしなお金( “funny money” )にわずかなりとも複利をかけることができるとすれば,経済からあらゆる実価値( “real value” )を吸い上げることが理論的に可能ですし,実際にそのように行動します.銀行は預金者を借り手に,大半の借り手を絶望的な借金奴隷,住宅ローン奴隷に陥(おとしい)れ,自らの利益のために金の卵を産むガチョウを完全に殺さない程度(ていど)に面倒を見るだけです.神の啓示を受けた律法(神授の法)授与者モーゼの知恵は,全ての貸し手の権限を抑(おさ)えるため負債はすべて7年ごとに棒引(ぼうび)きにする(第二法〈申命〉書 15・1-2参照),あらゆる資産は50年ごとに元の持ち主に戻す(レビ書15・10参照)こととする,と定めました! (訳注後記)

偉大な神の人であり神よりの深い霊性を湛(たた)えたモーゼが,このように物質的な諸問題にまで関心を寄せたのはなぜでしょうか? それは,荒廃した経済が人々を絶望に追いやり,神から引き離し地獄に向けさせるからです - 今日,それより明日がどうなるかあなたの周(まわ)りを見渡してください - 経済がうまくいけば,拝金主義( “worships Mammon” )などが幅をきかせない賢明な繁栄が可能になり,人々が神の善意を信じ神を崇拝し愛することがもっと容易になるでしょう.人はしょせん霊魂肉体から成るものなのです.(訳注後記)

モーゼならきっと小額準備銀行システムなど粉砕(ふんさい)したでしょう.ちょうど彼が金の子牛 “Golden Calf” をこなごなに砕(くだ)いたように.(訳注後記)

キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて.
リチャード・ウィリアムソン司教


* * *

第2パラグラフの訳注:
新約聖書・マテオによる聖福音書:第6章24節

* * *

第4パラグラフの2つの訳注:

①旧約聖書・第二法の書:第15章1-2節
②同・レビの書:第15章10節

* * *

第5パラグラフ最後の訳注:
「人はしょせん霊魂肉体から成るものなのです.」について.

人間は霊魂だけでなく,身体も一緒にかかえて生きているので,生きていく為には実生活面(経済)のケアも必要なのだ,という意味合い.

→主祷文〈主の祈り〉から…
・「…我らの日用の糧を今日我らに与え給え.」…経済面のケア
・「我らが人に赦すごとく我らの罪を赦(ゆる)し給え.我らを試みに引き給わざれ.我らを悪より救い給え.」…霊魂のケア

→新約聖書・マテオ聖福音書:第6章24-33節参照.

(31節から〈33節…太字〉)
『…何を食べ,何を飲み,何を着ようかと心配するな.それらはみな異邦人(=不信心な人)が切に望むことである.天の父はあなたたちにそれらがみな必要なことを知っておられる.だから,まず神の国とその正義を求めよ.そうすれば,それらのものも加えて与えられる.明日のために心配するな.明日は明日が自分で心配する.一日の苦労は一日で足りる.』

* * *

第6パラグラフの訳注:
「金の子牛 “Golden Calf” 」について:

旧約聖書・脱出の書:第32章を参照.
(エジプトを脱出してきたイスラエルの民は,預言者モーゼの留守中に金の子牛をつくり祭壇を設けてその鋳物の子牛を民を導く神として拝んだ.)

* * *

引用されている聖書の箇所は後から追加いたします.

* * *

2011年10月3日月曜日

2本の危機映画

エレイソン・コメンツ 第219回 (2011年9月24日)

2008年以来,アメリカ合衆国に出現した金融経済危機は西洋式生活様式全体の土台を揺るがしかねない状況ですが,この危機を描いた興味深い2本の映画がこれまでに登場しています.どちらもよくできた説得力のある作品です.2作品のうち一本は登場する銀行家たちをヒーローとして扱い,もう一本の方は彼らを悪役に仕立てています.もし西洋社会にいくらかでも未来があるとすれば,この扱いの違いは一考に値します.

ドキュメンタリー映画「インサイド・ジョブ・世界不況の知られざる真実(邦題)」(原題: “Inside Job” )は複数の銀行家,政治家,経済専門家,実業家,ジャーナリスト,学者,金融顧問などとの一連のインタビューで構成されています.そこに現れるのはこれらすべての領域でアメリカ社会の最上部が繰り広げる拝金主義と詐欺の共謀の驚くべき姿です.自由企業体制が1980年代,1990年代に行われた金融規制撤廃を正当化する理由でしたが,それは投資管理者たちにより大きな権力を着実に与えたため,彼らはそれによってあらゆる有力政治家,ジャーナリスト,学者たちを自分たちの支配下に置くことが可能になりました.こうして中産階級や労働者階級に対する情け容赦のない略奪行為が今もなお進行中です.犠牲となった人たちの怒りは爆発寸前ですが,少なくとも当面の間,投資管理者たちは自分たちのために巧みに作り出した景気の底でがつがつと貪(むさぼ)り食い続けるしかないでしょう.映画の中で「貪欲は良いことだ.それが世の中を動かすのだから」と銀行の幹部連中は言います.

二つ目の映画, “Too Big to Fail” (仮訳:「破綻するには大きすぎる」)では,主要なニューヨークの投資銀行リーマン・ブラザーズ “Lehman Brothers” の破綻を中心とした2008年秋の劇的な数々の出来事が再現されています.当時の合衆国財務長官ハンク・ポールソン “Hank Paulson” は,リーマン・ブラザーズの破産を狙(ねら)って政府の救済策を拒否するという古典的な自由企業の決定を下す役として描かれています.だがその結果は世界中の銀行,商業のメルトダウン(崩壊)をもたらしかねないようなショックを国際金融界にもたらし,ポールソンは政府内の同僚とニューヨークのすべての主要銀行家たちの支援をかりて,破綻させるわけにはいかない大手銀行を対象に税金投入に基づく救済案を合衆国議会が承認するよう説得しなければならなくなります.映画では,彼はまさしく成功し金融システムは救われます.政府と銀行家たちは時代のヒーローとなります.またしても資本主義は私たちが思っていた通りの驚異であることが証明されます - 社会主義の介入のおかげで!

では,ここに出てくる銀行家たちはヒーローでしょうか? それとも悪役でしょうか?その答えは,せいぜい短期的にはヒーローあっても,長期的には間違いなく悪党です.なぜなら,無私無欲を要求する社会や身勝手さを意味する貪欲の上に建てることのできる社会などないことを悟(さと)るにはほんのわずかな一般常識があれば十分だからです.どんな社会でも持てる者と持たざる者とが常に存在します(ヨハネ聖福音書12章8節をご参照ください)(訳注後記).金と権力を持つ社会の管理者たちはそのどちらも持たない大衆に何としても気配りすべきです.さもないと革命や大混乱が起きるでしょう.むろん世界主義者たちは大混乱を明日起こして,その翌日には自分たちが世界の権力を手中にできるよう画策します.だが,彼らが事を計っても,決着をつけるのは神なのです( “…while they may propose, it is God who disposes” ).

カトリック教徒や将来を案じる人たちは誰でもこの2本の映画を観に行き資本主義と自由企業について真剣に自問すべきです.いったい資本主義が今回のように社会主義によってのみ救済されたのはどうしてでしょうか? 時の政府が本当にそれほど悪かったのでしょうか? 資本主義が本当にそれほど良かったのでしょうか? ひとつの社会が生き残るためにはどうすれば強欲な人間たちを当てにすることができるのでしょうか? どうすればそのような依存にのめり込むことができたのでしょうか? そして今現在,このような疑問を投げかけている人がいるという兆候(ちょうこう)が何かあるでしょうか? あるいはあらゆる人々のマンモン崇拝(拝金主義) - 私たちは物事をその本当の名で呼ぶことにしましょう - が野放(のばな)しに蔓延(はびこ)っているのでしょうか?

イエズス・キリストが彼の司祭たちを通して罪人たちの罪を免除してくださらない限り,究極的に機能し得る御託身後 (訳注・原語 “post-Incarnation”,キリスト御降誕後の時代.) の社会システムなどありません.資本主義はこれまでの数世紀の間カトリシズム( “Catholicism”,カトリック教) のすねをかじっていただけにすぎません.資本主義の死をもたらしているのは今日のカトリシズムの疲弊(ひへい)なのです.

キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて.
リチャード・ウィリアムソン司教

* * *


第4パラグラフの訳注:

新約聖書・ヨハネによる聖福音書:第12章8節(太字部分)(11章38節-12章19節までを掲載)
THE HOLY GOSPEL OF JESUS CHRIST ACCORDING TO ST. JOHN – 12:8 (11:38-12:19)

第11章(38-57節)

ラザロがよみがえる(11・1-46)(注・ここでは38-46節)
『(イエズスは)…それから墓に行かれた.イエズスは,「石を取りのけなさい」と言われた.死人の姉妹マルタは,「主よ、四如日も経っていますから臭くなっています」と言ったが,イエズスは,「もしあなたが信じるなら,神の光栄を見るだろうと言ったではないか」と言われた.石は取りのけられた.
イエズスは目を上げて話された,「父よ,私の願いを聞き入れてくださったことを感謝いたします.私はあなたが常に私の願いを聞き入れてくださることをよく知っています.私がこう言いますのは,この回りにいる人々のためで,あなたが私を遣わされたことをこの人たちに信じさせるためであります」.そう言ってのち,声高く「ラザロ外に出なさい」と呼ばれた.すると死者は,手と足を布でまかれ顔を汗ふきで包まれたまま出てきた.イエズスは人々に,「それを解いて,行かせよ」と言われた.

マリアのところに来ていて,イエズスのされたことを見た多くのユダヤ人は彼を信じた.しかし,その中のある人はファリサイ人のところに行き,イエズスのされたことを告げたので,…』

イエズスの死を謀る(11・47-57)
『…司祭長たちとファリサイ人たちは,議会を開き,「どうしたらよかろう.彼は多くの奇跡を行っているから,もしこのまま捨てておいたら,人はみな彼を信じるようになるだろう.そしてローマ人が来て,われわれの聖なる地と民を滅ぼすだろう」と言った.

その中の一人で,その年の大司祭だったカヤファは,「あなたたちには何一つわかっていない.一人の人が民のために死ぬことによって全国の民の滅びぬほうが,あなたたちにとってためになることだとは考えないのか」と言った.*彼は自分からこう言ったのではない.この年の大司祭だった彼は,イエズスがこの民のために,また,ただこの民のためだけではなく,散っている神の子らを一つに集めるために死ぬはずだったことを預言したのである.

イエズスを殺そうと決めたのはこの日からであった.そこでイエズスは,もう公にユダヤ人の中を巡らず,ここを去って荒野に近いエフライムという町に行き,弟子たちとともにそこにとまられた.

ユダヤ人の過ぎ越しの祭りが近づき,多くの人々は清めをするために,過ぎ越しの祭りの前に,地方からエルサレムに上ってきた.彼らはイエズスを捜し求め,神殿に立って,「どう思う.イエズスは祭りに来ないだろうか」と言い合った.司祭長たちとファリサイ人たちがイエズスを捕らえようとして,彼の居所を知っている者は届け出よと命じていたからである.』

(注釈)
イエズスの死を謀る
*(51節)カヤファは,ユダヤが滅びるよりも,イエズス一人を犠牲にするほうが正しいと考えた.しかし,神の御計画として,イエズスは全人類のために死ぬのである.

***

第12章(1-19節)

ベタニアの食事(12・1-11)
『*¹過ぎ越しの祭りの六日前に,イエズスはベタニアに行かれた.それは,イエズスが死者の中からよみがえらせたラザロのいる所だった.さて,イエズスのために,食事の席が設けられると,マルタが給仕し,ラザロ(マルタの兄弟)はイエズスとともに食卓についた人々の中にいた.

そのときマリア(マルタの姉妹)は高価な純粋のナルドの香油一斤を持ってきてイエズスの御足に塗り,自分の髪の毛でそれをふいたので,香油の香りは家中に漂(ただよ)った.
弟子の一人で,のちにイエズスをわたすイスカリオトのユダが,「なぜ,この香油を三百デナリオに売って,貧しい人に施さないのか」と言った.そう言ったのは,貧しい人のことを思いやったからではなくて,彼は盗人であり,預かっている財布の中身を盗んでいたからである.
イエズスは,「この婦人のするようにさせておけ.この人は私の*²葬(ほうむ)りの日のためにこの香料をとっておいたのだ.貧しい人はいつもあなたたちとともにいるが,私はいつもあなたたちとともにいるわけではない」と言われた

大ぜいのユダヤ人は,イエズスがここにおられると知って,イエズスを見るためばかりでなく,イエズスが死者の中からよみがえらせたラザロを見るためにも,そこに来た.そこで司祭長たちは,ラザロをも殺してしまおうと決めた.この人のために多くのユダヤ人が彼らを去り,イエズスを信じるようになったからである.

エルサレムに入る(12・12-19)
翌日,祭りに来ていた大群衆は,イエズスがエルサレムに行かれる時,しゅろの枝をとって出迎え,「*³ホザンナ,賛美されよ,主のみ名によって来られる御者,*⁴イスラエルの王」と叫んだ.イエズスは子ろばを見つけてそれに乗られた.「*⁵シオンの娘よ,恐れるな.見よ,あなたの王は雌ろばの子に乗ってこられる」と記されているとおりだった.

弟子たちはその時はこれらのことがわからなかった.しかし,イエズスが光栄を受けられたのちに,弟子らは,それらのことがイエズスについて記されていたことであり,人々はそういうふうにイエズスに対して行ったのだと思い出した.

イエズスがラザロを墓から呼び出して,死者の中からよみがえらせたとき,イエズスとともにいた群衆がそれを証言した.人々がイエズスを迎えたのは,そのしるしを行われたと聞いたからであった.
ファリサイ人たちは,「あなたたちは何もできなかった.どうだ,みなあの人について行ったではないか」と言い合った.…』

(注釈)

ベタニアでの食事(12・1-11)
*¹ ヨハネは過ぎ越しの祭りとイエズスの死との関係を重視している(11・55,13・1,18・28,19・14,42).
イエズスの公生活の最後の週である.最初の週(2・1以下)(注・イエズスがその光栄を現される最初の奇跡<ガリラヤのカナの婚礼で水をぶどう酒に変えられた>)を詳しく述べたヨハネは,最後の週のことも詳しく伝えている.「神の子が光栄を受ける時が来た」(12・23,13・31,17・1,5).これらはイエズスの光栄の現れによって幕を閉じる.

*² イエズスは,マリアのこの行為を,自分の死骸をあらかじめ尊(たっと,とうと)んだことと見られた.

エルサレムに入る(12・12-19)
*³ 詩篇118・26参照.
→「主のみ名によってくるもの,祝されよ.
われらは主の家から,あなたを祝そう」

*⁴イスラエルの王とはメシアなる王のこと.

*⁵ 〈旧約〉ザカリアの書9・9参照.
→「*シオンの娘よ,喜びいさめ,
エルサレムの娘よ,喜びおどれ.
見よ,王がこられる,
正しいもの,勝利のものが.
彼は,謙虚なもので,
ろばに乗ってこられる.
子ろば,雌ろばの子に乗って.」

(注釈)*メシアは,謙虚なものであり,不正な,おごり高ぶる暴君とは,完全に別のものである
彼は,昔の王の乗り物に乗っておられる(〈旧約〉創世の書49・11→「ユダは子ろばをぶどうの木につなぎ,雌ろばの子をよきぶどうの木につなぐ.彼はぶどう酒で服を洗い,ぶどうの液で衣を洗う.」)
(注・ユダはヤコブ〈=イスラエル〉の12人の息子のうち上から4番目(ユダ族の祖)で,メシアたるキリストはこのユダ族から出ている.).
この預言は,イエズス・キリストの枝の日,エルサレム入城の日に,実現された(〈新約〉マテオ21・5,6,11・29).

* * *

2011年3月7日月曜日

難局を乗り切るための助言

エレイソン・コメンツ 第189回 (2011年2月26日)

先週の「エレイソン・コメンツ」で,あるワシントンのインサイダーがいかに現代世界が幻想の上に運営されているかを自慢していることについてキャサリン・オースティン・フィッツ “Catherine Austin Fitts” を引用して触れました.彼女自身,ワシントンのインサイダーで,ジョージ・ブッシュ(前大統領の父,米国第41代大統領)政権の住宅省次官補を務めていました.彼女は自分の実体験に基づいた話をしています.同じインタビューで彼女は他にもいくつかの興味深い発言をしています.とりわけ,今後の経済的見通しを心配し,自分の財産や生活の質を維持したいと望む平均的な米国民に対して彼女が与えうる助言について語っています.その内容は以下の通りです(「2月2日付『私たちは金融クーデターの犠牲者』www. 321 gold 」をご覧ください).(訳注・原文 - www.321gold.com, Feb 2, “We are victims of a Financial Coup d’Etat” ):--

「肝心なのはあなた自身の時間と注意です.中央集権に利害関係を持つ人々や組織に耳を傾けたり関わったりするのを止めるべきです.まずテレビを消すことから始めましょう.そして,あなたの預金,購入,献金の対象を信頼できる人々や企業に移しなさい.

諸経費を減らしましょう.自分の時間を使ってできるだけ多くの能力を伸ばし,より多くのことを自分自身で出来るようにしたり,周囲の人々と交換できるよう心がけるべきです.投資は貴金属を含む有形物を対象にしましょう.いわゆる「slow burn」(遅い昇進)を悩み自分を見失わないようにすることです.最後に,霊的な戦いをするために必要な知力,能力を高めましょう.金融腐敗はずっと奥が深く非常に浸食力の強い道徳的,文化的問題の兆候です.あなたの人生をあなたの愛する人や物事に役立つよう構築することです.

あなた自身の健康を守りなさい.食べ物,飲み水の供給は徐々に管理され汚染されています.地場産(じばさん)の新鮮な食品と飲料水を確保する対策を講ずることがあなたの健康にとって不可欠です.またあなたの体内の老廃物を取り除き免疫システムを強化するための方法について自分に出来ることから学んでいくことも大事です.環境汚染や電磁気汚染の増大は体力維持のための努力を必要としており,その度合いは十年前には考えられなかったほどです.」

困難が近づいていると感じている人にとって,とても役立つ助言となる一文をもう一つご紹介します.キャサリン・オースティン・フィッツと同じ考え方に立つラリー・ラボード “Larry Laborde” が書いた「英雄の出現を待つ」“Waiting for a Hero”(同じウェブサイトの1月17日付け)をご覧ください:--

「偉大な合衆国の平均的な市民は現段階で何をすべきでしょうか? 疾病(しっぺい)のような地方債 “municipal bonds” への投資を避けることです.それはまず最初に債務不履行(さいむふりこう)に陥(おちい)るでしょう.長期合衆国国債 “long term US bonds” も避けましょう.短期手形 “Short term US notes” (期間6か月以下)は現在のところ恐らくOKでしょうが,いつでも売れるようにしておくことです.あらゆる経費を切り詰め現金を残しましょう.身分相応以下の生活をすべきです.現金を蓄(たくわ)え,その現金は貴金属でヘッジしなさい(訳注後記).手持ちの現金は地元の信用組合か地元の株主保有の銀行に預けなさい.その金融機関の格付けをチェックして,あなたの地域で最も安全な機関に預金しているかどうか確認しましょう.クレジットカードは破り捨て使用するのは止めましょう.買い物の支払いは現金で済ませましょう.緊急時用に二か月分の現金を手元に置いておきましょう.貴金属に投資する場合は,全体の50パーセントを金に,残り50パーセントは銀にしましょう.なるべく天然の貴金属に投資しましょう.小口投資家にとって良い投資になるのは普通に毎日消費する保存可能な必需品を6か月分だけ購入するというやり方です.そういうものなら多分6か月で5から10パーセントくらいは値上がりするでしょう(利益率としては悪くありません).菜園を造るか地元の農家を支援しましょう(あるいはその両方をするのもよいことです).」

手短に言います.目を覚ましなさい! 読者のみなさん,目覚めるために,まずテレビを消すことから始めなさい.身分不相応な生活をせずに,資力を下回る範囲内で上手に豊かに暮らせるよう工夫(くふう)しなさい.現金を貯蓄し,地元で預金しかつ貴金属に投資しなさい.競争社会を少なくとも精神的に脱却し,心だけでもバーチャルな(=虚構の)世界から現実の生活へ戻しなさい.クレジットカードの使用は止めなさい.多少の食糧を買いだめしておきましょう.だがあなたがどんなものを飲食しているかいつも注意を払ってください.世界支配を求めて食品や飲み水を汚染している人類の諸々の敵に対し目を覚まして用心しなさい.それは,人類に対して仕掛(しか)けられている基本的に霊的な戦いの一環なのです(訳注後記).カトリック信徒のみなさん,あなたの信仰を臨戦体制下に置きましょう!

キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて.
リチャード・ウィリアムソン司教


* * *

第6パラグラフの訳注:

「ヘッジ」 “hedge” について.

ある特定通貨の為替取引に関する将来の為替変動リスクを避けるために,これと反対の取引行為を行ない,為替リスクを相殺しようとするもの.たとえば,直物市場でドルを購入した場合に,先物市場で円を買い予約していれば,将来の為替変動リスクは相殺されることになる.(「ブリタニカ国際大百科事典」参照)

* * *

最後のパラグラフの訳注:

・「人類の諸々の敵」“the enemies of mankind”
…「悪魔」や「悪霊」による,悪い欲から生じたあらゆる悪行を指す.

・「人類に対し仕掛けられている基本的に霊的な戦い
“a war on mankind which is fundamentally spiritual
…「霊の世界における,①諸々の悪の霊〈悪魔〉と,②真の神への信仰に基づく正しい良心(=神の霊(聖霊),真理の霊,正義の霊)との戦い」という意味合いがある.)


新約聖書〈バルバロ神父訳〉からの引用:

・新約聖書・使徒聖パウロによるエフェゾ人への手紙:第6章10-20節

『兄弟たちよ,主において力を受け,その力によって自分を強めよ.悪魔の企(くわだ)てに刃向かうために,神の武具をすべてつけよ.
私たちが戦うのは,*¹血肉ではなく,*²権勢と能力,この世のやみの支配者,天界の悪霊だからである
神の武具をすべてつけよ.悪の日に抵抗し,すべてを果たしたのちなお立つためである.
では真理を帯にし,正義を胸当てにして立て.平和の福音への熱を足にはき,信仰の盾を取れ.それによって悪者の火矢をすべて消すことができるであろう.
さらに*⁴救いのかぶとと,神のみことばである聖霊の剣をも取れ

*⁵すべての祈りと願いをもって心のうちでいつも祈れ.絶えず目を覚まして,忍耐強くすべての聖徒のために祈れ.
*⁶また私のためにも祈れ,福音の奥義を恐れなく告げようとして話すとき,適当なことばが下されますように.私は福音の使者として鎖につながれている.私が語らねばならぬことを恐れなく語れるように祈れ.』

(注釈)

*¹「血肉は人間の力のこと

*²「権勢と能力は悪霊のこと


①旧約聖書・イザヤ書:11章5節参照.
『…腰のひもは正義,腹の帯は忠実,…』(メシア〈キリスト〉の特徴の一つとしてしるされている.)
②同52章7節参照.
喜びを告げる者,平和を知らせる者,よい便りを運び,救いを告げ,「神が支配する」と,シオンに言う者の足は,山の上でなんと美しいことか.』
③旧約聖書・知恵の書:5章18節参照.
『…神は正義を胸当てにし,正しいさばきをかぶととし,…』

*⁴イザヤ書59章17節参照.
『…彼(神)は正義を胸にあて,救いのかぶとを頭にかぶり,服のように仇討ちをまとい,がいとうのように,熱心で身を包まれた.…』(神はその民のために直接干渉される.)

*⁵新約聖書・使徒聖パウロによるコロサイ人への手紙:4章2-4節参照.
警戒し,感謝しながら絶えず祈れ.特に私たちのためにも祈れ.神がキリストの奥義を告げるために,私たちに宣教の門を開かれるように.私はそのために鎖につながれている.私が話さねばならぬことばでキリストを宣言できるように祈れ.』

*⁶パウロは釈放されることを望まない.キリストのために鎖につけられることは光栄である.ただ使徒としての使命を果たす力をこい求める.

* * *

・新約聖書・ヘブライ人への手紙:第4章12,13節

『実に神のみことばは,生きているもの,行うものであり,両刃の剣(もろはのつるぎ)よりも鋭いものであって,魂と霊,関節と骨髄を切り分けて通り,心の思考と考えとを分けるほどのものである.
被造物のうち一つとして神のみ前に隠れられるものはないのであって,私たちがいつかさばきを受けねばならぬ神のみ前に,すべては明らかであり開かれている.』

2011年2月20日日曜日

信じ難い不遜

エレイソン・コメンツ 第188回 (2011年2月19日)

運命の予言者は自分の評判を取ろうとはしませんが,もし彼らが神の使者だとしたら,真実を告げなければなりません.現在,そのような使者は政治や経済に関わりを持つべきではないと考える人々もいます.だがもし,政治が宗教にとって代わり,人間を神の場に置くことで必然的に誤った宗教と化してしまっていると仮定すればどうでしょうか?そして経済(あるいは金融)がまさに多くの人々を飢えさせようとしているのだと仮定したならどうでしょうか?神の使者たちが,アリストテレスとともに,もし人々が基本的な生活必需品に事欠く状態でどうやって道徳に適(かな)った人生を送れるのか,と尋(たず)ねることは許されないことでしょうか?有徳な人生など彼ら神の使者と無関係なことでしょうか?

そういうわけで,ここで権威ある米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の一記者の書いた注目すべき一節を引用したとしても私は間違っていないと思います.その記者は,ホワイト・ハウスの前主席報道官に批判的な記事を書いたことで,2006年夏,時のブッシュ大統領の上級顧問役から厳しく非難されたことについて語っています.記者は当時,その上級顧問役が自分に何を言おうとしているのか良く理解できなかったが,後になって,それがブッシュ大統領体制の核心に触れることだと分かった,と述べています.記者が引用した顧問役自身の言葉をここにご紹介します:--

その顧問は記者にこう言ったそうです.新聞記者のような人々は,「私たちが言う現実に基づいた社会の中にいるのです.その社会とは,つまりあなたのように,いかなる解決策も目に見える現実についての思慮分別ある学習から現れてくると信じる人たちのことですよ.」 顧問は,記者は昨日まで通じた現実の尊重という原則を忘れるべきだと言い,次のように付言したそうです.「世界はもはやそのような考え方では動いていないのです.私たちは今や一つの帝国であり,私たちが行動することで私たち固有の現実を創り出しているのです- あなたのなさるように思慮深く - そして私たちは再び行動し,別の新しい現実を創り出すのです.それをあなたたちも学習できるし,そうやって物事が解決していくのです.私たちは歴史の役者を演じているのです…そしてあなたは,あなた方はみな,私たちが演じる役をただ学習するだけにすぎないのですよ.」(キャサリン・フィッツの「2月2日付『私たちは金融クーデターの犠牲者』www. 321 gold をご覧ください.)(訳注・原文 “See www.321 gold, Feb 2, "We are Victims of a Financial Coup d'Etat", by Catherine Fitts”.)

現代世界がいかに幻想の上に動かされているかを道徳的に説いているこの話をしているのは私ではありません.話しているのは,ワシントンのインサイダー中のインサイダーです.彼はいかに現代世界が幻想の上に運営されているかを肯定的に誇っているのです.彼の言葉は,当時の政府のでっち上げ,例えば,9・11事件やサダム・フセインの「大量破壊兵器」などとまさに一致するのではないでしょうか.(それらのでっち上げは)政策を正当化するために「創り出した」ものであり,そうしなければ正当化は不可能だったのではないでしょうか?現実や現実を重んじる人々をこれほどまで軽んじるその傲慢(ごうまん)さは息を飲むばかりです.

古典ギリシャ人たちは顕現(けんげん)された神についての知識が何もない異教徒でしたが,神の世界の道徳的な骨組みたる現実が,彼らが見た通り,神々により統治されているとを明確に理解していました.どんな人間でも,たとえ英雄であろうと,そのような神の骨組みをこのブッシュの顧問のように否定する者はみな「傲慢」の罪を犯し,人間相応の身分を超えて頭を高くもたげていることになり,神々によりその罪に応じて粉々(こなごな)に粉砕(ふんさい)されるでしょう.

カトリック信徒のみなさん,もし神の恩寵が人間性を見捨てているとお考えなら,今日ますます必要とされている自然の様々な教訓について古代の異教徒たちから学び直すのが最良です.アイスキュロス作悲劇「ペルシャ人」に登場するクセルクセス( “Xerxes in Aeschylus' Persae” ),ソフォクレス作悲劇「アンティゴネ」に登場するクレオン( “Creon in Sophocles' Antigone” ),エウリピデス作悲劇「バッカスの信女」に登場するペンテウス( “Pentheus in Euripides' Bacchae” )に学びなさい(訳注後記).聖なるロザリオの祈りを確実に唱えるだけでなく,ほら,古典名作も読み,芋(いも)も植えて(=畑を耕〈たがや〉して),負債も支払うんですよ!

キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて.
リチャード・ウィリアムソン司教


* * *

(最後のパラグラフの訳注・「ギリシャ悲劇」について)

クセルクセス
・=クセルクセス一世.アケメネス朝ペルシア帝国の王(在位前486年-前465年).ダレイオス一世の子.前480年父の遺志を継いでギリシア遠征(ペルシア戦争)を行ったが,サラミスの海戦に敗れた.治世後半から側近の権力闘争が激化.謀殺された.

* * *

クレオン
・テーバイの王ライオスの妃イオカステの兄弟.オイディプスが追放された後、テーバイ王となる.
・(テーバイ)
〈=テーベ,“Thebae”.〉古代ギリシャの重要都市.現シベ.テーベ伝説上のオイディプス王の首都で,古代ギリシャ悲劇の舞台として知られる.
・(解説)
悲劇「アンティゴネ」の作者ソフォクレスは,神の法(自然法)と人間の法ではどちらがより重要かを,多神教を信仰するアテネ市民(=ギリシャ人)に問うた.ソフォクレスは神の法を選んだ.彼はギリシャ国中にまん延しつつあった道徳の破壊が国家没落の原因となり得ることを認識していたことからギリシャ国民の傲慢(=ギリシャ語でhubris )さを警告した.「アンティゴネ」では最終的にテーベ王となったクレオンの傲慢が露呈(ろてい)している.この悲劇の前編「オイディプス王」(前430年頃)では,オイディプス王の傲慢が詳述されている.

* * *

ペンテウス
・ギリシャ神話の人物.カドモスの娘アガウェがスパルトイの一人エキオンと結婚して生んだ子で,老齢のカドモスから譲位され,二代目のテーベ王になったが,ディオニュソス(=バッカス.ギリシャ神話の酒神,豊穣神)の信仰がテーベに広がるのを妨げようとして,従兄弟にあたるこの神を怒らせ,神罰によって八つ裂きにされて死んだ.このとき,彼の母や伯母たちが,信女たちの先頭に立って彼を害したという.

(ブリタニカ国際大百科事典,百科事典マイペディア他参照)

2010年12月23日木曜日

資本主義の展開

エレイソン・コメンツ 第179回 (2010年12月18日)

社会は利己主義によっては成り立ちません.今は誰かが社会で自分の要求を通したいときには基本的にその人の持つ金銭にものを言わせる時代です.仮に経済用語以上の意味で,資本主義をすべての国民が望み通りに可能な限りの資本すなわち金銭を作れるような社会を組織する一手段であると定義するなら,資本主義は矛盾(むじゅん)に満ちたものとなります.その場合の資本主義は,誰もがみな利己的になるよう仕向けることで利己主義を要求する社会を作ろうとしていることになるからです.

こういうわけで資本主義は,その資本主義者社会の構成員たちが前資本主義者的価値観,たとえば常識,金銭追求にあたっての節度,公益の尊重などを持ち続ける限りにおいてだけ存続できます.そうでなければ,(上に定義したような利己的な)資本主義は構成員個々にとって不利に働きます.利己主義は無私無欲に反する働きをするからです.その場合,資本主義は寄生生物であり,前資本主義者的価値観の働く社会的身体に寄生して徐々に母体を蝕(むしば)み弱体化させていくのです.

金銭追求の上に築き上げられた社会に内在する矛盾は,世界金融,世界経済の現況の下で壊滅(かいめつ)的な結果に至っています.とくに第二次世界大戦が終わっていらい世界の人々は,かつて生きる目的を与えてくれた精神的な充足より今では物質的な充足を優先させ,ますます金銭追求を強めています.金銭を称賛し追求する人々は,投資家たちが自分たちの社会で権力を振るうことを喜んで許してきました.称賛され引っ張りだこになった投資家たちはますます金銭,権力の追求に熱中してきました.結局のところ,金銭,権力がさらに多くを得ようとするとき,それを抑制するどのような歯止めがそこに内在しているでしょうか?そんなものは何もありません.銀行家たちは紛れもない悪党へと変貌(へんぼう)してしまっているのです.

そういうわけで,たとえば,10年か15年前に考案された「デリバティブ」は,それを提供する銀行屋たちに手数料でひと財産築かせることはあっても,大量破壊兵器のように世界金融の精巧なメカニズムを壊す作用をする金融商品です.なぜならこの金融商品は巨額で返済不能な負債をいとも簡単に造り上げるからです.返済不能な負債で安定を失った詐欺(さぎ)的な世界では,各国政府が次々にどこからともなく大量の「金銭」をひねり出し,その負債を「支払う」ことで見せかけの秩序を維持しています.だが,このような処理の仕方は当該通貨のあらゆる有用性を空にしてしまうインフレに終わるだけです.かくして世界のあらゆる紙幣と電子マネーは - もう長年もの間それ以外にない状態ですが - 今や終焉(しゅうえん)を迎えています.

だが,通貨と社会の関係は潤滑油(じゅんかつゆ)とエンジンの関係に似ています.潤滑油なしでは,エンジンは故障し使い物にならなくなってしまいます.社会で通貨がなければ(物資・サービスの)交換はずっと困難になり商業は減速し行き詰まってしまうでしょう.もしこのような理由で食糧運搬トラックが走れなくなり食料不足が起きたら,とりわけ大都市で,政治家たちはどうやって食糧暴動を回避し農民たちが熊手を手に追いかけてくるのを食い止めることができるでしょうか?戦争を始めるしかありません!

第三次世界大戦もさほど遠くないことかもしれません.主よ,憐れみ給え!

キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて.
リチャード・ウィリアムソン司教