2011年12月26日月曜日

232 必要な幼子 (12/24)

エレイソン・コメンツ 第232回 (2011年12月24日)

今日のニュースでは四六時中(しろくじちゅう),世界とりわけユーロランド “Euroland” (訳注・欧州統一通貨ユーロ “Euro” を共通通貨として採用している国々により形成される通貨圏)の金融・経済危機の話で持ちきりです.オランダのコメンテーター(courtfool.info)が自国向けに,バンクスターたち(訳注・ “banksters” 悪徳銀行幹部)の手から国家の貨幣 “State money” を取り戻そうという,古典的な解決策を提案しています.クリスマスのひとときにこのような金銭問題を考えるのは奇妙に思えるかもしれませんが,この問題全体は一見良さそうな解決策がみな本当に役立つ解決策かどうかという点に尽きるのです.

ユーロが多種多様な欧州諸国に政治統合を強制する手段として積極的に設計されたものでない限り,それは非常に異なる国々の経済の共通通貨としては最初から欠陥(けっかん)があったということになります.そもそもユーロ共通通貨制度は確かに貧しい加盟国には借入・支出,すなわち借りては支出するということを可能にし,その一方で豊かな国にとっては輸出・融資,すなわち輸出と融資を重ねることに確実に役立ちました.だが,そのプロセス(過程)が長続きするのは不可能だったのです.貧しい国々が抱(かか)えている借金の利息をもはや遣り繰り(やりくり)することすらできなくなったとき,豊かな国々もまた愚(おろ)かな融資をしてきた自国の主要銀行の倒産によって経済が麻痺(まひ)する危険に脅(おびや)かされる羽目(はめ)に陥(おちい)りました.

現在,欧州委員会 “the European Commission”,欧州中央銀行 “the European Central Bank”,国際通貨基金 “the International Monetary Fund (IMF) ” が協力して緊急資金を提供しようとしています.別な言い方をすれば,負債の問題をさらなる負債で解決しようというわけです.だが,お手上げ状態の負債国が資金を受けるには国際的な管理機構の指示に従うことが条件となっています.統治能力が益々(ますます)弱まってきている各国政府は支出を削減(さくげん)するよう求められるでしょう。財政的に豊かな国はどうかといえば,こちらもまた自国の主要銀行が行った愚かな貸出から生じた損失を補(おぎな)うため歳出削減をして不人気とならざるをえないでしょう,とオランダのコメンテーター,デ・ルイター氏 “Mr.de Ruijter” (訳注・オランダ語読み「デ・ロイトル」)は述べています.

さて,同氏の示す解決策に戻ります.彼はきわめて簡単な解決策だと言います.早晩消える定めにあるユーロに数十億もつぎ込み,国際機関に歳出削減を押しつけさせる代わりに,「私たちは国家の通貨を導入すればいいのです.」これは,いまや世界のほとんどの国で民間の支配下にある中央銀行に国有銀行 “State bank” が取って代わるということです.国有銀行にのみ通貨発行の権限を認めるのです.すべての融資は国家の通貨で提供します.あらゆる私有,非国有銀行には希薄(きはく)な空気から融資残高を造り出すのを禁止します.言い換えれば小額準備金銀行制度 “fractional reserve banking” を禁止するのです(エレイソン・コメンツ第224回をご参照ください).非国有銀行は提供するサービスの手数料を受け取るのは構(かま)いませんが利子を取るのは認めません.これが同氏の解決策の概要(がいよう)です.

では,誰がその国有銀行をコントロールするのでしょう? デ・ルイター氏は「国有銀行は財務大臣の管轄下に置き,議会がコントロールする.適格者で構成する委員会が通貨制度の長期的利益を監視する」と,書いています.

なかなか結構です.だが,デ・ルイターさん,誰が「適格者」の養成にあたるのでしょうか? 彼らはどのような学校で公益を忠実に守ることを学べるでしょうか? バンクスターたちに巧(たく)みに買収されるのを防ぐため彼らにどれほど強力なモチベーション(=動機付け,意欲,やる気,自発性)を与えられるでしょうか? それは民主主義でしょうか? 欧州を現在の惨状(さんじょう)に陥(おとしい)れたのはまさしく民主主義です!

本当に役立つ完璧(かんぺき)な解決策は一つしかありません.それはベトレヘムの飼い葉桶(かいばおけ)に生まれた神の御子 “the divine Child in the Crib of Bethlehem” です.親愛なる読者の皆さま,クリスマスおめでとう.(クリスマスカードを送ってくださったすべての皆さまありがとう.そして,カードを頂けなかった皆さまにもありがとう!).

キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて.
リチャード・ウィリアムソン司教

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