2011年11月7日月曜日

225 陰謀説 (11/5)

エレイソン・コメンツ 第225回 (2011回11月5日)

神殺し "deicide" について述べた最近の「エレイソン・コメンツ」(第222回)に続き,一部の読者は「エレイソン・コメンツ」が世界情勢でユダヤ人が果たす役割について頻繁(ひんぱん)に言及(げんきゅう)するのをお望みかもしれません.だが,その人たちは失望する恐れがあります.私がこれまでに取り上げてきた225件の諸問題の中で,ユダヤ人を名指(なざ)しで取り上げたのは6回を大幅に超えてはいないと思います.というのも,ユダヤ人にからむ問題の有無にかかわらず,彼らは決して主要な問題ではないからです.最大の問題は現代人が神を信じないことにあるのであり,私はそのことが「エレイソン・コメンツ」の主要な懸念(けねん)だということを大部分の読者の皆さんに理解していただければと望んでいます.

陰謀(いんぼう)説 “Conspiracy theories” ,すなわちユダヤ人が世界制覇を企(たくら)んでいる "conspiring to dominate the world" といった陰謀説は現在も存在していますが,そこにはふたつの誇張(こちょう)があり,その間の正しいバランスを保つことが賢明(けんめい)なのですが容易(ようい)にできることではありません.ほとんどの人々はあらゆる陰謀説はナンセンスで,それを信じる人々は「陰謀オタク」 “conspiracy nuts” だけだとするマスメディアの見方に従っています.他方で,少数派の人々は強い確信をもって,あらゆる世界の出来事は何らかの陰謀,とりわけユダヤ人の陰謀により説明されると考えています.1800年前の一人の著名なカトリック作家 “a famous Church writer” が本質的な真理をもっとも正しく語っています.

テルトゥリアヌス “Tertullian” (160-220年) はカトリック信仰とユダヤ人の権力は秤(はかり)のふたつの天秤皿(てんびんざら)に似ていると言いました.カトリック信仰が上がるにつれてユダヤ人権力が下がり,カトリック信仰が下がるとユダヤ人権力が上がるというわけです.だが,カトリック信仰は権力に勝(まさ)るものです.主要な問題がユダヤ人ではなく,人々の間のカトリック信仰の増減(ぞうげん)如何(いかん)にあるというのはそのためです.だからこそ諸々の陰謀が確かに存在するのであり,それは重要な役割を果たしており単に軽視して済ませるべきではありません.しかし,主要な問題は人々が唯一の真の教会(訳注・=カトリック教会)におられる真の神に背を向けていることにあるのです.手短に言えば - ここが重要なポイントです - ユダヤ人の権力が今日これほど強大であるとすれば,その責任はユダヤ人以外の人々(=非ユダヤ人) “the Gentiles” 自身にあるのです

したがって,とりわけディズレーリ “Disraeli” (英国首相)とウッドロー・ウィルソン“Woodrow Wilson” (米国大統領)が暗にほのめかしながらもほとんど公言できなかったこと,すなわち世界の出来事を差配(さはい)する様々な場面の背後では一つの闇の権力が働いているということを理解し始めた人は誰でも,照明派(光明会)(訳注・原語 “the Illuminati”. イルミナティ.秘密結社)(訳注後記),ユダヤ人,フリーメーソンなどをのろう際にバランス感覚を失わないよう気をつけ,教皇ピオ10世 “Pius X” が言われた「誰もが自分の義務を果たすようになれば,すべてが良い方向にいく」という言葉の持つ知恵を正しく理解するようにしましょう.なぜならモーゼの十戒の第一戒が示すように,私たちの第一の義務は神に対するものであり,もし私たちすべてが自分の義務を果たし神に立ち帰るなら,神にとってさまざまな敵たちが現在振るっている権力を阻(はば)もうと介入することなしに元に戻すことはいとも簡単なこととなるからです.そうした敵を彼らが最初にいた場所に留め置けるのは神だけです.

こういうわけで,1917年に聖母マリアがポルトガルのファティマ “Fatima” にご出現になる前には,反カトリック主義者たち “the anti-Catholics” がポルトガル政府を完全に支配下に置いていましたが,ポルトガル国民のほぼ全体が聖母マリアの望みどおり祈りと償(つぐな)いを捧げたとき、聖母は反カトリック主義者たちの権力を無血の革命のうちにたやすく解消させてしまわれました.世界各地で共産主義が勝利を収(おさ)め誰もが神を信じなくなっていた20世紀において,ポルトガルはカトリック国家の見本となったのです.

神ののなかで最も賢明なものは,自分たちが神に役立つのは神に不誠実な人々の背中に災難のもとを振りかけることだとよく知っています.もし神のが自分たちが敵から災難を負わされているのは全ての霊魂が神に目を向け天国に入れるようになるためだと理解しさえすれば,諸々の陰謀説はすべてそれが持つ実際の重要さより重すぎも軽すぎもしない場所に落ちることでしょう.

キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて,
リチャード・ウィリアムソン司教


* * *

第4パラグラフの訳注:
照明派(光明会) “the Illuminati” 「イルミナティ」について.

1776年バイエルン(Bavaria)の大学教授だった元イエズス会士アダム・ワイズハウプトによって創設された秘密団体.クニッゲの協力のもとにキリスト教に代る啓蒙主義的自由思想ないし理性宗教を広めようとした.会員は「完全可能者」と呼ばれたが,盛時でも2000人をこえなかった.ゲーテ,ヘルダーらもその会員であったといわれている.85年無政府主義的傾向のためバイエルン政府の手で禁圧された.
(ブリタニカ国際大百科事典参照)

* * *