エレイソン・コメンツ 第362回 (2014年6月21日)
イングランド・ケント州(いんぐらんど・けんと しゅう)に「抵抗運動」(ていこう うんどう)のため購入(こうにゅう)した新しい家(あたらしい いえ)を私が気に入って(わたくしが きに いって)いるかどうか知人の多く(ちじんの おおく)から尋(たず)ねられます( "A number of friends have asked me how I like the house newly purchased for the “Resistance” in Kent, England." ).私はこの家(いえ)が気に入って(きに いって)います( "I like it." ).家はとても広(ひろ)く,聖ピオ十世会 (せいぴお じゅっせいかい)( "SSPX" )から追放(ついほう)された仲間の一人(なかまの ひとり)であるスティーブン・エイブラハム神父(すてぃーぶん・えいぶらはむ しんぷ)( "Fr Stephen Abraham" )の手助け(てだすけ)できれいに模様替え(もよう がえ)されつつあります( "It is spacious and it is being beautifully set up by a fellow-exile from the Society of St Pius X, Fr Stephen Abraham." ).この先(さき),そして遠い将来(とおい しょうらい),この家がどのように使(つか)われることになるのか.それは天のみぞ知る(てん のみぞ しる)です( "Only Heaven knows how it intends the house to be used in the near and distant future, …" ).だが,差(さ)しあたり,この家は快適な隠れ家(かいてきな かくれが)です( " … but it is meanwhile a delightful refuge, …" ).神(かみ)が創造(そうぞう)され,リベラル派(りべらる は)が触(ふ)れることのできない海(うみ)から徒歩5分(とほ ごふん)のところにあります( " … five minutes on foot from the sea which God created, and which the liberals cannot touch." ).
過去(かこ)にイギリスの著名な画家や小説家の中(いぎりすの ちょめいな がかや しょうせつかの なか)にもケント州北東部(けんとしゅうほくとうぶ)のこの快適な一角(かいてきないっかく)を隠れ家(かくれが)としたものが何人(なんにん)かいます( "Several famous English artists and writers from the past have also found refuge in this delightful corner of north-east Kent." ).画家の中で最も有名(がかの なかで もっとも ゆうめい)なのがジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(じょぜふ・まろーど・うぃりあむ・たーなー)(1775-1851)です( "Most famous of the artists is J.M.W. TURNER (1775-1851)." ).彼(かれ)はロンドンで生まれ(ろんどんで うまれ),働(はたら)かざるをえなかった幼年時代の大半(ようねん じだいの たいはん)をそこで過(す)ごしました( "Born in London where he spent most of his working life, …" ).彼は私(わたし)たちの新しい家の所在地(あたらしい いえの しょざいち)ブロードステアズ(ぶろーど すてあず)( "Broadstairs" )から4マイルほど離れたマーゲート(よんまいる ほど はなれた まーげーと)( "Margate" )で11歳から数年(じゅういっさい から すうねん)のあいだ成長期(せいちょう き)を過(す)ごしました( " … from age 11 he spent several formative years in Margate, some four miles up the coast from Broadstairs." ).彼はそこで海を発見(うみを はっけん)し( "Here he discovered the sea, …" ),海が持つ明るい効用(うみがもつ あかるい こうよう)が彼の生涯(かれのしょうがい)の絵画作品(かいが さくひん)のインスピレーション(霊感)(いんすぴれーしょん〈れいかん〉)となりました( " … which with its light effects was a lifelong inspiration for his painting, …" ).彼はその後(ご)何度(なんど)もマーゲートを訪(おとず)れています( "… and to Margate he frequently returned later in life." ).
マーゲートで最も著名(もっとも ちょめい)な20世紀の英国詩人(にじゅっせいきの えいこく しじん)のT. S. エリオット(てぃー・えす・えりおっと)(1888-1965)もいます( "Also in Margate the most famous poet in English of the 20th century, T.S. ELIOT (1888-1965), …" ).彼は現在(げんざい)でも残(のこ)っているマーゲートの海岸に面した屋外パビリオン(かいがんに めんした おくがい ぱびりおん)で( "… composed in an open-air pavilion still standing on Margate's beach, …" ),最も有名な長編詩「荒地」 (もっともゆうめいな ちょうへんし「あれち」)( "The Wasteland" )(1922年作)第3部の大半(だいさんぶの たいはん)を書き上げ(かき あげ)ました( "… a substantial section of the third part of his most famous poem, The Wasteland (1922)." ).彼はロンドン(ろんどん)で不幸な結婚生活(ふこうな けっこん せいかつ)のため健康(けんこう)をひどく損(そこ)ね,この海辺の町(うみべの まち)に隠れ家を求め(かくれがを もとめ)ました( "He had come to the seaside town as a refugee from London where an unhappy marriage had seriously affected his health." ).彼はマーゲートに長く滞在(ながく たいざい)せず,スイスのローザンヌ(すいすのろーざんぬ)に移(うつ)り( "He did not stay long, but went on to Lausanne, Switzerland, …" ),そこで良い医者の手当を受け(よい いしゃの てあてを うけ)健康を取り戻し(けんこうを とりもどし),「荒地」 を完成 (「あれち」を かんせい)させました( "… where thanks to the care of a good doctor he completed his recovery and The Wasteland. " ).マーゲートの海の眺め(うみの ながめ)が彼の健康回復の手助け(けんこう せいかつの てだすけ)になったのは間違い(まちがい)ありません( "But the prospect of the sea at Margate had no doubt helped." ).
少(すく)なくともイングランドで著名(いんぐらんどで ちょめい)なもう一人の詩人(もう ひとりの しじん)がブロードステアズ(ぶろーどすてあず)から2マイル離れたラムズゲート(にまいる はなれた らむずげーと)( "Ramsgate" )を頻繁に訪れ(ひんぱんに おとずれ)ています( "Another famous poet, at least in England, was a frequent visitor to Ramsgate, two miles down the coast from Broadstairs." ).サミュエル・テイラー・コールリッジ(さみゅえる・ていらー・こーるりっじ)( "Samuel Taylor Coleridge" )(1772-1834)です.彼はイングランドが生(い)んだ5人の著名なロマン派詩人(ごにんの ちょめいな ろまんは しじん)のひとりで( "Samuel Taylor COLERIDGE, one of England's five outstanding Romantic poets, …" ),作品の中(さくひんの なか)では長編詩(ちょうへん し)「老水夫行」 (ろうすいふこう)( "The Ancient Mariner" )が最も広く(もっとも ひろく)知られ(しられ)ています( "… is best-known for his long poem, The Ancient Mariner. " ).彼はラムズゲートの海で泳ぐ(およぐ)のが好き(すき)でしたが,彼の場合(ばあい)もおそらく健康維持(けんこう いじ)が理由(りゆう)のひとつだったのでしょう( "He loved bathing in the sea at Ramsgate, perhaps also for health reasons." ).いずれにせよ,彼は海水(かいすい)が冷(つめ)たければ冷たいほど,そこで泳ぐのが好(す)きだったといいます( "In any case, the colder the sea, the more he liked it." ).
だが,ブロードステアズ(ぶろーどすてあず)自体(じたい)を頻繁に訪れた人(ひんぱんに おとずれた ひと)たちの中(なか)で最も有名(もっとも ゆうめい)なのはチャールズ・ディケンズ(ちゃーるず・でぃけんず)( "Charles Dickens" )(1812-1870)でした( "Most famous of all, however, was a frequent visitor to Broadstairs itself, the novelist Charles Dickens (1812-1870)." ).彼は1837年にここを初めて訪れ(はじめて おとずれ)ました( "He first resorted to Broadstairs in 1837, …" ).最初の小説「ピクウィック・クラブ」 (ぴくうぃっく・くらぶ)( "The Pickwick Papers" )(訳注・オリジナル・タイトル〈初版の表題〉は,"The Posthumous Papers of the Pickwick Club" )を書き上げるのに最適な静かな場所としてここを選んだようです( "… as a quiet place in which to complete his first novel, The Pickwick Papers, …" ).彼はこの古風で小さな海辺の町(こふうで ちいさな うみべの まち)がすっかり好き(すき)になり,1940年代から1950年代にかけて,家族を連れて(かぞくを つれて)何度も訪れ(なんども おとずれ)ました.時(とき)には小説を書く(しょうせつを かく)ため,時には筆を休め休養(ふでを やすめ きゅうよう)するためでした( "… but he so fell in love with the antiquated little seaside town that he often returned with his family to write, or to rest from writing, through the 1840's and into the 1850's." ).ディケンズがかつて滞在した古い町(たいざい した ふるい まち)のいたるところに,彼の名前,彼の小説の題名,その登場人物の名前(かれの なまえ,かれの しょうせつの だいめい,その とうじょう じんぶつの なまえ)が今でも見受け(いまでも みうけ)られます( "His name and names of his novels, or of characters from his novels, are to be found all over the old town that he knew." ).現在(げんざい),ブロードステアズはビクトリア王朝風やモダンな郊外(びくとりあ おうちょう ふうや もだんな こうがい)に,圧殺(あっさつ)されているとまでは言(い)いませんが,完全(かんぜん)に取り囲まれ(とりかこまれ)ています( "It is now surrounded, not to say strangled, by Victorian and modern suburbs, …" ).だが,ブロードステアズは毎年6月(まいとし ろくがつ)になると,かつての著名な訪問者(ちょめいな ほうもんしゃ)を「ディケンズ祭り」(でぃけんず まつり)で祝(いわ)います( "… but Broadstairs still celebrates every year its most famous visitor with a Dickens Festival in June." ).
デービッド・アレン・ホワイト博士(でーびっど・あれん・ほわいと はかせ)( "Dr. David Allen White" )は,カトリック教徒の文学,音楽教師(かとりっく きょうとの ぶんがく・おんがく きょうし)で,世界中の英語圏(せかい じゅうの えいご けん)でカトリック信仰(しんこう)を維持(いじ)するために努力(どりょく)し,多数(たすう)のカトリック信徒(しんと)のあいだで良く知られている人物(よく しられている じんぶつ)です.彼は大(だい)のディケンズ愛好家(あいこう か)です( "Dr. David Allen White, a Catholic teacher of literature and music who is well-known to many Catholics striving to keep the Faith all over the English-speaking world, is a great lover of Dickens." ).彼はこの夏(なつ)ロンドンを通り(ろんどんを とおり)かかるそうで( "Since he is passing through London this summer, …" ),その機会(きかい)にブロードステアズ(ぶろーどすてあず)まで足を延ばし(あしを のばし),8月2日,3日(はちがつ ふつか,みっか)にディケンズについての24時間週末セミナーを開く(にじゅう よ じかん しゅうまつ せみなーを ひらく)ことに応(おう)じてくださいました( "… he agreed to visit Broadstairs in order to hold on August 2 and 3 a 24-hour weekend seminar on Dickens, …" ).セミナーは一般公開(いっぱん こうかい)とし,期間中(きかん ちゅう)に3回の会議(さんかいの かいぎ),主日ミサ聖祭(しゅじつ みさ せいさい),博士案内(はかせ あんない)による市内(しない)のディケンズ博物館訪問(でぃけんず はくぶつかん ほうもん)を予定(よてい)しています.この博物館(はくぶつかん)はかつてディケンズ自身(じしん)が訪(おとず)れたことのある小さな古い家の中(ちいさな ふるい いえの なか)に開設(かいせつ)されています( "… open to the public and including three conferences and Sunday Mass, and a visit which he will guide to the Dickens Museum in town, set up in a little old house known to, and visited by, Dickens himself." ).読者の中(どくしゃの なか)で参加に興味(さんかに きょうみ)がある方(かた)は至急(しきゅう)( info@dinoscopus.org を通〈とお〉して)お知らせ下さい(おしらせ ください)( "If you are interested in attending, let us know soon (through info@dinoscopus.org), …" ).参加人数を制限(さんか にんずうを せいげん)せざるをえない場合(ばあい),先着順(せんちゃく じゅん)となりますので( "… because if numbers have to be limited, first come will be first served." ).食事はお出し(しょくじは おだし)できますが,宿泊(しゅくはく)は参加者各自の手配(さんかしゃ かくじの てはい)となります.Meals will be provided in-house, but visitors will have to find their own accommodation outside." ).この時期(じき)は夏季休暇(かき きゅうか)シーズンのピークに当たる点にご注意(しーずんの ぴーくに あたる てんに ごちゅうい)ください( "Beware, it will be the height of the holiday season." ).
ディケンズ自身(でぃけんず じしん)はカトリック教徒(かとりっく きょうと)ではありませんでしたが,ドストエフスキー(どすとえふすきー)はかつて彼を「偉大なキリスト者」(いだいな きりすと しゃ)と呼びました( "Dickens was not Catholic, but Dostoevsky called him “a great Christian”." ).ディケンズは疑(うたが)いなく温か(あたたか)でオープンな心(おーぷんな こころ)と才気(さいき)あふれた筆の持ち主(ふでの もちぬし)でした( "Dickens certainly had a warm and open heart, and a brilliant pen." ).
キリエ・エレイソン.
ディケンズにとって,ブロードステアズは大きな喜びでした.
(でぃけんすに とって,ぶろーどすてあずは おおきな よろこび でした.)
( "For Dickens, Broadstairs was a great delight." )
その訳を知るため,ホワイト博士のお話を聴きに来て下さい.
(その わけを しる ため,ほわいと はかせの おはなしを ききに きて ください.)
( "To find out why, come listen to Dr White." )
リチャード・ウィリアムソン司教
* * *