2010年11月8日月曜日

40周年

エレイソン・コメンツ 第173回 (2010年11月6日)

先週月曜日は,大いに感謝に満たされた節目の日であると同時にいくぶん不安の残る日でした.その日(2010年11月1日)は聖ピオ十世会が創立されてから40周年を迎えた日で,40年前(1970年)の同日ジュネーブ,ローザンヌおよびフリブール(Geneva, Lausanne and Fribourg)のシャリエール司教( “Bishop Charriere” )が,ルフェーブル大司教がその数か月前に提出していた聖ピオ十世会の規則を普遍教会 (訳注・原文 “Universal Church” =カトリック教会)に代わって公認した日でした.

今日のたがの緩(ゆる)んだ世界的な背教の真っ只中(まっただなか)でカトリック信仰を持ち続け,その信仰によって生きようと真剣に努力している誰にとっても,この日が感謝すべき機会であることは明らかです.第二バチカン公会議いらい公式のカトリック教会は崩壊状態にあり,その状態は今も依然として続いています.なぜなら,指導的な立場にある聖職者たちが,神のいるべき場所に神ではなく人間を置く同公会議の諸々の目新しい物事に固執し続けているからです.したがってカトリック世界の人々はいまだに間違った方向に導かれ続けており,神のお建てになったカトリック教会のピラミッド構造は上から下まで完全に崩れかけています.

それ故に,敬虔(けいけん)ながらもピラミッド構造型の精神を持ち合わせた一聖職者(訳注・ルフェーブル大司教のこと)が,崩壊に向け転落していく主流ピラミッドの内部に,非主流である反ピラミッド構造を築く必要があると考えたことは最初の奇跡でした.彼がローマ教皇制度の権威の影響下で崩壊しつつある主流ピラミッドの下に非主流のピラミッドを構築するのに成功したのが第二の奇跡でした.そしてさらに,大司教の死後20年近くもの間,彼の後継者たち(訳注・聖ピオ十世会の会員たち)が非主流のピラミッドを守り続けてきたことが第三の奇跡です.現在,聖ピオ十世会はカトリック信仰の擁護(ようご)について独占的に振る舞ってはいません - そのようなことは神がお許しになりません! - だが聖ピオ十世会は今日に至るまで長年カトリック信仰擁護の中心となってきました.私たちは,聖ピオ十世会が(その創立いらい今日に至るまでの40年間にわたり)いかに素晴らしい神の賜物であったかを,私たち一人ひとりに理解させて下さる神の善良さに対し,限りない感謝の気持ちでいっぱいです.

だが私たちは同時に用心しなければなりません.バリエル神父(1897年-1983年)( “Father Barrielle” )は,スイス・エコン( “Econe in Switzerland” )にある聖ピオ十世会の最初の神学校で草創期からの霊的指導者でした.私は,バリエル神父が敬愛する師であり聖イグナチオの霊躁( “Spiritual Exercises of St Ignatius” )の偉大な指導者であったヴァレ神父(1883年-1947年)( “Father Vallet” )の言葉を事あるごとに引用していたのを今でも思い出すことができます.ヴァレ神父の作った(訳注・聖イグナチオによる30日間の)「霊躁」の5日間の凝縮形(ぎょうしゅくけい)は - バリエル神父が聖ピオ十世会の神学生たちへ伝達したことにより - 今日に至るまで世界中の聖ピオ十世会の信奉者たちにとり非常に有意義なものとなっています(訳注後記).ヴァレ神父はこの霊躁とその歴史を深く研究し,ひとつの事に気づきました.それは,いかなる修道会が霊躁を説くために設立され,うまくいったとしても,ある一定期間経つと悪魔がその修道会を横道へそらせ,注意散漫(さんまん)にさせ,破壊させてしまうということでした.バリエル神父が引用したヴァレ神父の言によると,その一定期間とはいったいどれほどの期間だったのでしょうか? なんと,それは40年間だったのです!

現在では,この霊躁を説くだけが聖ピオ十世会の唯一の使徒職(訳注後記)というわけではありません.それだから,聖ピオ十世会は悪魔の集中的な注目から逃れることができるでしょうか?(決してそんなことはなく,それどころか)むしろその逆です!たとえその(聖ピオ十世会の)非主流ピラミッドが依然として,いたるところで崩れかけているカトリック教会の残骸(ざんがい)の中でカトリック信仰擁護の中心でい続けているとしても,(それは相も変わらず)悪魔の超集中的な注視対象( “super-concentrated attention” )となり得るばかりなのです!私たちはみなそのことをわきまえて注意しましょう.とりわけ - カトリシズムのピラミッド構造によって - ピラミッドの頂点にいる人たちは注意しなければなりません.そして,私たちはその人たちのことを心に覚えて静かに祈り続けましょう.

キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて.
リチャード・ウィリアムソン司教


* * *


(第4パラグラフの訳注)

・バリエル神父=“Father Barrielle (Le Père Ludovic-Marie Barrielle) ”.
フランス・マルセイユ出身のカトリック司祭.

・ヴァレ神父=“Father Vallet (Le Père François de Paule Vallet )”.
北スペイン(バルセロナ)出身のカトリック司祭.スペイン・フランスで活動した.聖イグナチオの30日間の霊躁を,近代人がその本質要素の結実を損なうことなく5日間で行うことができる形式に凝縮した.


(第5パラグラフの訳注)

「使徒職」“apostolate” について.

・「使徒的活動」,「宣教活動」,「使徒的使命」などの意味合い.
原英語 “apostolate”.カトリック教会用語.キリストの12使徒の(使徒聖ペトロを中心とした)地位,その職・活動に由来する.→「使徒」= “Apostle”.

・“apostolate” は,(キリスト御自身が建てられた教会の首長として直接キリストに任命された)使徒聖ペトロの後継者であるローマ教皇〔司教〕職またその権威・地位を意味する.
その位の名称を「聖ペトロの使徒座」“Apostolic See” =「聖座」“Holy See” と呼ぶ.

・ここ(EC173第5パラグラフ)では「病院(看護)・学校(教育)などの形をとり,ある一定の使徒的(=福音宣教上の)目的のため信徒会・修道会などが団体単位で組織的に行う活動」という意味で使われている.

・一信徒が個人単位でイエズス・キリストの福音の宣教のため献身し,全生活を尽し使徒的活動に専念・従事して働く場合も「使徒職」の意味に含まれる.