エレイソン・コメンツ 第217回 (2011年9月10日)
しばらく前のことですが,ある家庭の妻で母親の女性から夫との意思疎通(そつう)が上手く図れず困っていると打ち明けられました.二人はどこが間違っているのか話し合うのですが,いつもきまってお互いに腹を立て結局は決裂して終わってきたというのです.事の是非はさておき,私は彼女の問題が神の定めた結婚生活における男女の見事なまでに素晴らしい相互補完的な役割を,あちこちの家庭であるように,意図的にひどく否定してしまっていることにその根があると感じました.そこで彼女宛てに私が書き送った手紙の内容を以下にご紹介します.彼女は私の手紙が役立ったと言いました.ほかの方たちにもお役に立てばと思います.ところで,女性の皆さま,私はかならずしも問題がすべて貴方たちにあるとは考えていません!
あなたの結婚生活のご苦労にご同情申し上げます. ルールの第1: 子供たちの前や子供たちに聞こえる所で決してご主人と口論してはいけません.何よりまず子供たちに配慮しなければなりません.あなたが子供たちの前でご主人の足を引っぱったり言い争ったりしても,家族のために何の助けにもなりません.逆に有害です.
ルールの第2: あなたのご主人に敬意を表しなさい.たとえご主人が常にそれに値するわけでなくてもです.女性は愛で動き,男性はエゴ(訳注・=自我・うぬぼれ・自尊心)で動きます.この違いは大きなものです.だからこそ聖パウロ - すなわち神のみことば - は「夫に従い “obey” なさい.夫たちよ,妻を大事に “cherish” しなさい.」と言っています.大きな違いです! (訳注後記) いかなる結婚生活においても,夫が妻に愛情を示し妻が夫を敬うかぎり,普通は満ち足りた結婚の本質がそこにあるのです.そして,もしご主人があなたに愛情を示さないなら,少なくとも愛らしい憎めない妻として振る舞いなさい.ご主人とけんかするとき,あなたがそのように見えることは決してないでしょう.
ご主人を敬うためなら,どんな事や物でも犠牲にしなさい.ご主人はあなたの愛情以上に尊敬を必要とします.あなたはご主人の尊敬以上に愛情を必要とします.ご主人に従いなさい.あなたがご主人に指図していることを決して見せてはいけません.あなたがご主人にしてほしいと望むことをご主人が自分で決心してするようにしなさい.また妻が家庭の外へ働きに出ることは良いことではありません.とくに妻の収入が夫よりも多い場合はなおさらです.もしあなたが稼(かせ)がなければならず,しかもご主人より多く稼いでいる場合は,決してそれを見せてはなりません.その事実を隠(かく)しなさい.男性は,一家の長として,自分が大黒柱なのだと認識している必要があるのです.あなたは一家の心であり,それはちょうど一家の長が欠くことのできない存在であるのと同じくらい,あるいはそれ以上に必要な存在ですが,あなたは一家の長ではないのです.また,もしあなたが一家の長として振る舞わざるを得ないことがあっても,それを面(おもて)に出さず,とにかくその事実を隠しなさい.
もし,これであなたの結婚生活が上手く機能しないとしたら驚きです.結婚生活が上手くいくかどうかは通常,女性がいかに男性に順応するかにかかっているのであり,その逆でありません.ロシアに「トマトの苗が支柱(苗がその回りをよじ昇る)に頼(たよ)るように,女性は男性に頼るものだ」ということわざがあります.もし彼が支柱でないなら,彼を支柱にするためにあなたができるすべてのことをしなさい.そして,もしあなたにそれができないなら,その時はもう一度その現実を隠しなさい.神は女性が連れ合う男性に順応するよう,男性より女性を順応性のある性質に造られています.
あなたは以前子供たちの教育のためにご家庭でお金が必要だと話されました.あなたの娘さんたちにとって最良かつ最も重要な教育は母親の台所でできることに気づかれたことがありますか? 母親が家庭にいると仮定した場合の話です.家庭外のどんな学校で受ける教育よりもずっと多くのことをあなたは自分を手本として示すことで娘たちを教育することができるのです.またあらゆることにかかわらず夫に従い夫を敬う妻として母としての貴重な模範を娘さんたちに示してあげなさい.子供たちは非常によく観察するものです.あなたの示す模範は子供たちが将来結婚して家庭を持ったときに幸福になるために非常に重要なのです.
ご主人との喧嘩(けんか)もいいでしょう.ただし静かに,敬意をもって,子供たちから離れてしてください.そして「私だって一日中外で働いてきたのよ,私だって家庭での思いやりが必要だわ」などと言ってはなりません.なぜなら,母親が外で働くのは正常ではないからで,男性たちはそれが自分の不甲斐無さ(ふがいなさ)のためだとしても,そのことを感じているからです.男性は変えようがありません.この人があなたの結婚相手として神が選ばれた男性なのです.あなたの子供たちにご主人を敬う手本を見せなさい.それが,とりわけあなたの娘さんたちに対する貴重な贈物です.
現代はどこの家庭でも多くの祈りを必要としています.神の御母(聖母マリア)よ,お助けください!
キリエ・エレイソン.
英国ロンドンにて.
リチャード・ウィリアムソン司教
* * *
第3パラグラフの訳注:
聖パウロのこのことばに該当する聖書からの引用箇所.
①新約聖書・使徒パウロのエフェゾ人への手紙:第5章22-33節(背景を知るため前後の部分も記載します)
②同・コリント人への第一の手紙:第11章1-16節
③以降…(「父なる神と神のみ子キリスト」・「キリストと教会」・「神・キリストと夫」・「夫と妻」の関係について理解を助ける聖書からの引用を追加します)
* * *
①エフェゾ人への手紙
第4章
教会の一致(4・1-6)
『さて,主の囚人となった私(使徒パウロ)はあなたたちに勧める.
あなたたちは召されたお召しにかなうように生き,すべての謙遜と柔和と寛容をもって愛によって忍び合い,平和の結びによって*¹霊の一致を守るように努めよ.
*²体は一つ,霊は一つである,あなたたちが召し出しによって一つの希望に召されたのと同様に.
*³主は一つ,信仰は一つ,洗礼は一つ,神は一つで,すべてのものの父であり,すべてのものの上にあり,すべてのものの上に働き,すべてのものの内にいます.』
(注釈)
*¹ 信者間の心の一致.
*² 「体」は教会.
*³キリスト(〈新約〉コリント人への手紙〈第一〉8・5-6).
それぞれの役目(4・7-24)
『私たちはキリストの賜の秤(はかり)に従って*¹おのおの恩寵を受けた.だから,「*²高く上って多くの奴隷を引き連れ,人々に贈物をした」と書き記されている.しかし*³上ったと言えば,地の低い所にも下ったわけではないか.下った者はすべてのものを満たすために,天のいと高き所に上ったそのお方である.
ある人を使徒とし,ある人を預言者とし,ある人を*⁴福音者,ある人を牧者と教師とされるのもそのお方である.
それは聖徒たちを,*⁵聖職の働きのためキリストの体を建てるために整え,ついに信仰の一致と神のみ子の深い知識に達し,*⁶満ち満ちるキリストの背丈にまで至る完全な人間をつくるためである.
こうして私たちは子どもではなくなり,人を偽善と誤謬(ごびゅう)に迷いこませるたくらみのままに,いろいろな教えの風に吹きまわされ翻弄(ほんろう)されないようになる.
*⁷むしろ真理を宣言し,*⁸かしらであるキリストによって,すべて愛において成長するだろう.
キリストによって,*⁹それぞれの肢体の働きに従い,身体全体は自分を養い生かすすべての*¹⁰節々を通じて調和と統一を受け,こうして成長をとげ,愛によって自分をつくり上げる.
私は主においてあなたたちに切に望んで言う.
心のむなしさに従う異邦人のように生活するな.彼らは知恵がくらみ,その中の無知と心のかたくなさによって神の命を離れた者となった.*¹¹彼らの道徳観はうすれ,すべての情欲と汚れを行い,淫乱の生活にふけった.
しかしあなたたちは,キリストからそんなことを習ったのではない.
あなたたちが*¹²イエズスにある真理に従って,イエズスにおいて教えられ,それを聞くなら,*¹³人を欺(あざむ)く欲に腐(くさ)った前の生活の古い人を脱ぎ捨て,霊的な思いによって自分を新たにし,正義と真実の聖徳において,神にかたどってつくられた新しい人を着なければならない.』
徳の実行(4・25-32)
『だから,偽善を捨てて,おのおの隣人に真実を語れ.*¹⁴あなたたちは互いに肢体だからである.*¹⁵怒っても罪を犯すな.日が傾くまで怒りを保つな.*¹⁶悪魔に足がかりを与えるな.盗人はもう盗むな.
むしろ,貧しい人々に施すために,自分の手で何かよい仕事をして働け.悪いことばを決して口から出すな.ただ必要な場合,徳に役だち聞く人に恩寵を与えるよいことばだけを言え.
あなたたちがあがないの日のためにしるしを受けたその神の聖霊を悲しませるな.すべての苦さ,憤(いきどお)り,怒り,叫び,ののしり,つまり悪をすべて捨てよ.
互いに情けとあわれみをもち,キリストにおいて神があなたたちをゆるされたように,互いにゆるし合え.』
(注釈)
*¹ 教会の奉仕を目的とする特別な恩寵のこと.特能ともいう.
*² 〈旧約〉詩篇68・19の引用であるが,原文テキストの忠実な引用ではない.
*³ 託身があったから,昇天もなければならなかった.
*⁴ 四人の福音史家のことではなく,福音を伝える人々,伝道者,福音師のこと.
*⁵ 信者は聖徳に近寄れば近寄るほど,聖職の働きにふさわしい者となる.
*⁶ このキリストは完全な背丈(せたけ)のある人間として考えられている.キリストの神秘体,教会の会員である信者はみな,自分に定められている高さにまで伸びなければならない.それは,よく成長したすべての肢体が集まることによって満ち満ちたキリストを実現するためである.
*⁷ 1・22,5・23,コロサイ人への手紙1・18,2・19参照.
*⁸ 信じるだけでは足りない.キリスト信者は信仰を喜び,信仰を生かさねばならない.
*⁹ 教会内の信者おのおのの活躍と使命.
*¹⁰ 教会に属する者の相互の奉仕.
*¹¹ 〈新約〉ローマ人への手紙1・18以下参照.
*¹² コロサイ人への手紙2・6参照.
*¹³ コロサイ人への手紙3・9,ローマ人への手紙6・6参照.
*¹⁴ コリント人への手紙〈第一〉6・15,ローマ人への手紙12・5参照.
*¹⁵ 〈詩篇〉4・5.心中に怒りが起こっても,それを行いに出して罪を犯すまでになるな.
*¹⁶ 悪魔に誘惑の機会を与えてはならない.
第5章
キリストの模範(5・1-2)
『実に愛される子らとして,神に倣(なら)う者であれ.私たちを愛し,私たちのために芳(かんば)しい香りのいけにえとして神にご自分をわたされたキリストの模範に従って,愛のうちに歩め.』
汚れを棄てよ(5・3-7)
『聖徒にふさわしいように,あなたたちの中では,*¹淫行,いろいろな汚れ,情欲は口にさえもするな.また,汚行(おこう),愚かな話,下品な冗談も言うな.それはよからぬことである.
ただ神に感謝せよ.
*²淫行の者,好色な者,情欲の者はみな―――これは偶像礼拝者と同じである―――,キリストと神の国を継げない.
人のむなしいことばにだまされるな.*³不従順な者の上に神の怒りを呼ぶのはそれらの事柄である.だから彼らと交わるな.』
神の子らの生活(5・8-14)
『元あなたたちはやみであったが,今は主において光である.したがって*⁴光の子として歩め.光の実はすべての善と正しさと真実にある.主に喜ばれることをわきまえ知れ.
*⁵実を結ばぬ闇(やみ)の行いに加わらず,かえってそれを責めよ.彼らがひそかに行っているのは,*⁶口にするのも恥ずかしいことである.
*⁷公に責められることはすべて完全な光の中に現れ,現されたものはみな光である.
これがために,「*⁸眠る者よ,起きよ,死者の中から立ち上がれ.キリストはあなたを照らすだろう」と言われている.』
賢明と節制(5・15-20)
『であるから,愚かな者ではなく,知恵ある者のように慎(つつし)んで歩んでいるかどうかを調べよ.今の時をよく利用せよ,時代は悪いからである.
あなたたちは思慮のない者とならず,主のみ旨を理解せよ.ぶどう酒に酔うな.それは淫乱のもとである.
むしろ霊に満たされよ.ともに詩の歌と賛美の歌と霊の歌をとなえ,心を挙げて主に向かって歌い,そして賛美せよ.主イエズス・キリストのみ名によって,すべてのことについて,絶えず父なる神に感謝せよ.』
家族の愛(5・22-33)
『キリストを恐れて互いに従え.
妻よ,主に従うように自分の夫に従え.
キリストがその*⁹体であり,それを救われた教会のかしらであるように,夫は妻のかしらである.教会がキリストに従うように,妻はすべてにおいて夫に従え.
夫よ,キリストが教会を愛し,そのために命を与えられたように,あなたたちも妻を愛せよ.
キリストが命を捨てられたのは,水を注ぐことと,それに伴(ともな)う*¹⁰ことばによって教会を清め聖とするためであり,また汚点(しみ)もしわもすべてそのようなもののない,輝かしく清く汚れのない教会をご自分に差し出させるためであった.
(28節)「そのように夫も自分の体のように妻を愛さねばならない.妻を愛する人は自分を愛する人である.(29節)だれも自分の体を憎む者はなく,みなそれを養い育む.
キリストも教会のためにそうされる.(30節)*¹¹私たちはキリストの体の肢体だからである.
(31節)「*¹²これがために男は父と母を離れ,妻と合って二人は一体となる」.
*¹³この奥義は偉大なものである.
私がそう言うのは,キリストと教会についてである.
あなたたちはおのおの自分の妻を自分のように愛せよ.妻もまたその夫を敬え.』
(注釈)
*¹ エフェゾは有名な堕落の町であった.
*² エフェゾのアルテミス女神に属する淫乱の行為を暗示しているようである.
*³ 不道徳は神の罰を呼び下す.
*⁴ 〈新約〉コロサイ人への手紙1・12,コリント人への手紙〈第二〉4・6参照.
*⁵ 淫祀(いんし),邪教のようなものが行われていて,それを光の教会と対照させている.
*⁶ 偶像の秘教の堕落を暗示する.
*⁷ 異教徒が淫行に属することを公に話すのは,もちろんよいことではない.しかし,悪行を正すために,公に責めることはなされてもよい.そうすれば,光はやみを吹きはらうであろう.それはキリストの光である.
*⁸ 初代教会の典礼の賛美歌の一句らしい.
*⁹ この「体」は教会である.
*¹⁰ 洗礼文.
(28-31節)自然の愛だけではなく,信仰と愛に満ちたキリストの教える超自然の愛.
*¹¹ ブルガタ訳,「その肉と骨で成り立っている」.
*¹² 〈旧約〉創世の書2・24参照.
→『…神はご自分にかたどって,人間をつくりだされた(1章27節).
…主なる神は仰せられた,「人間が一人きりでいるのはよくない.私は彼に似合った助け手を与えよう」.
主なる神は,地から野の獣と空の鳥とをつくり,人間のもとに連れてゆかれた.それは,人間がそのものを,どのように呼ぶかを見たいと思われたからだった.その生き物を人間がどう呼ぶか,その呼び方がそれらの名となるはずであった.
さて,人間はすべての家畜と,空の鳥と,野の獣とに名をつけたが,人間に似合った助け手はまだ見つからなかった.
そのとき,主なる神は人間を深い眠りに入らせた.人間は眠りに入った.神は人間のあばら骨の一本を取りだし,肉をもとのように閉じた.
主なる神は人間から取りだしたあばら骨で女を作って,それを人間のもとに連れてゆかれた.そのとき,人間は言った,
「さて,これこそ,わが骨の骨,わが肉の肉.これを女(ヘブライ語でイシャ)と名づけよう.男(イシュ)から取りだされたものなのだから」.(2章18-23節)
だからこそ,人間は父母を離れて,女とともになり,二人は一体となる(2章24節).
*¹³ 婚姻が「偉大な奥義」なのは,それが教会とキリストの神秘的な関係をかたどるからである.』
第6章
親と子の義務(6・1-4)
『子どもたちよ,主において両親に従え.それは正しいことである.(父母を敬え)―――これは*¹約束のついている第一のおきてである―――.そうすれば*²あなたの上によいことがあり,地上において長寿を得ることができる.
両親よ,あなたたちの子どもを怒らせることなく、主に従って規律をもって育て戒めよ.』
主人と奴隷の義務(6・5-9)
『*³奴隷よ,キリストに従うように恐れと尊敬と真心をもってこの世の主人に従え.*⁴目の前だけで仕えるのではなく,人の気に入るためでもなく,心から神のみ旨を果たすキリストの奴隷として働け.人ではなく主に仕えるように快く仕えよ.あなたたちの知るとおり,奴隷も自由民もおのおの主から善業の報いを受ける.
主人よ,*⁵あなたたちもしもべに対して同じようにせよ.脅迫をするな.彼らとあなたたちの主は天に在(あ)って,人を区別されない方であることをあなたたちは知っている.』
キリスト信者の武具(6・10-20)
『兄弟たちよ,主において力を受け,その力によって自分を強めよ.悪魔の企(くわだ)てに刃向かうために,神の武具をすべてつけよ.
私たちが戦うのは*⁶血肉ではなく,*⁷権勢と能力,この世の闇(やみ)の支配者,天界の悪霊だからである.
*⁸神の武具をすべてつけよ.悪の日に抵抗し,すべてを果たしたのちなお立つためである.
では真理を帯にし,正義を胸当てにして立て.平和の福音への熱を足にはき,信仰の盾を取れ.それによって悪者の火矢をすべて消すことができるであろう.さらに,*⁹救いのかぶとと,神のみことばである聖霊の剣をも取れ.
*¹⁰すべての祈りと願いをもって心のうちでいつも祈れ.絶えず目を覚まして,忍耐強くすべての聖徒のために祈れ.
*¹¹また私のためにも祈れ,福音の奥義を恐れなく告げようとして話すとき,適当なことばが下されますように.私は福音の使者として鎖につながれている.私が語らねばならぬことを恐れなく語れるように祈れ.』
ティキコの派遣(6・21-22)
『あなたたちにも,私の様子と私のしていることを知らせたい.愛する兄弟であり,主において忠実なしもべティキコがそのすべてを伝えるだろう.私はそのために彼をあなたたちのもとに送った.彼が私たちのことを知らせ,あなたたちの心を慰(なぐさ)めるだろう.』
あいさつ(6・23-24)
『父なる神と主イエズス・キリストから,兄弟たちに平和と信仰とともに愛が与えられるように.
*¹²朽ちることなき愛をもって,主イエズス・キリストを愛するすべての人に恩寵があるように.』
(注釈)
*¹ 十戒のうち,報いの約束のついている最初のおきて.
*² 〈旧約〉第二法の書5・16参照.
*³ 〈新約〉コロサイ人への手紙3・22-25,ペトロの手紙〈第一〉3・18,ティトへの手紙2・9-10参照.
*⁴ 労働を聖化すること.
*⁵ パウロは社会革命を勧めるのではない.主人が信仰と愛に基づいてことを行えば,社会の正義は自然に行える.
*⁶ 「血肉」は人間の力のこと.
*⁷ 「権勢と能力」は悪霊のこと.
*⁸ 〈旧約〉イザヤの書11・5,52・7,知恵の書5・18参照.
*⁹ イザヤ59・17参照.
*¹⁰ 〈新約〉コロサイ人への手紙4・2-4参照.
*¹¹ パウロは釈放されることを望まない.キリストのために鎖(くさり)につけられることは光栄である.ただ使徒としての使命を果たす力をこい求める.
*¹² パウロの手によるあいさつらしい.
* * *
②コリント人への第一の手紙:第11章1-16節
『私がキリストに倣(なら)っているように,あなたたちは私に倣え.
あなたたちがすべてのことについて私を思い出し,私の伝えたとおり*¹伝えを守っていることに喜びを言おう.私はあなたたちに次のことを知ってもらいたい.
*²すべての男のかしらはキリストである.女のかしらは男である.キリストのかしらは神である.
頭にかぶり物をして祈りや預言をする男はみな,その*³かしらを辱(はずかし)める.頭にかぶり物をしないで祈りや預言をする女もみなそのかしらを辱める.その女は剃髪(ていはつ)しているのと同じだからである.女がかぶり物をしないなら髪も切ればよい.神を切ったり剃(そ)ったりするのが女の恥であるなら,かぶり物をするがよい.
男は神のすがたであり光栄であるから,頭にかぶり物をしてはならぬ.女は男の光栄である.
男が女から出たのではなく,女が男から出たのであって,*⁴男が女のために造られたのではなく,女が男のために造られたからである.
そのため女は,*⁵天使たちのために,*⁶権威に服するしるしを頭にかぶらねばならぬ.
といっても*⁷主においては,男なしでは女もなく,女なしでは男もない.
女が男から出たように男は女から生まれ,そしてすべては神から出る.
あなたたちは自ら判断せよ.女がかぶり物なしで神に祈るのはよいことであろうか.
自然そのものも教えているではないか.男が長い髪をしているのは恥であって、女が長い髪をしていれば誇りであることを.女の神はかぶり物として与えられたからである.
だれかこれについて抗弁しようとするなら,私たちにはそういう習慣はなく,神の諸教会にも例がないと答えたい.』
(注釈)
*¹ 「伝え」とは初代教会の聖伝の教えのことである.
*² キリスト教的社会における階級.女性の服従の理由は,神の創造にある.しかし,その順序は,徳ではなく単に権威のことだけである.
*³ かしらの意味にも,頭の意味にもとれる.
*⁴ 〈旧約〉創世の書2・22-23参照.
*⁵ 創世の書6・2.ユダヤ系の偽典書に基づけば,昔のある学者は,この「天使」が天から落ちた天使のことだと言っていた.また,信者の集会のかしらの意味にとった人もあった.
しかしこの天使は,信者の集会のとき,祈りを神の座まで運ぶ(〈新約〉黙示録8・3,エフェゾ人への手紙3・10)よい天使のことと思われる.
*⁶ ここでは自分に対する他人の権利のこと.
*⁷男も女も不完全なもので,主のみ前にあっては平等である.
* * *