2009年10月12日月曜日

神を畏れぬ欧州

エレイソン・コメンツ 第118回 (2009年10月10日)

哀れなアイルランド! 哀れな欧州!わずか16か月前, アイルランド国民は, アイルランドをより堅く欧州連合(EU)に結びつけるはずのリスボン条約(2007年)の承認を国民投票で否決しましたが, この国民総意的な「ノー」はアイルランドや欧州の政治家たちが望んだ決定ではありませんでした. そこで彼らはいくつかの譲歩を示した上で新たな国民投票をアイルランドに押し付け, 先週, 望み通りの票決を得ました. これで欧州連合は, ブリュッセルでの意思決定を効率化し, 欧州委員会の中央集権的統治権限を強化するための大幅な改革への道筋を整えたことになります. だが, これは各加盟国が欧州委員会の諸決定を拒否する機能を犠牲にすることになります.

アイルランド全有権者の3分の1以上が先週選択したと思われるものは, 1973年に欧州共同体に加盟する以前には同国で知られていなかった物質的繁盛と大量消費主義であることは確かです. 1932年から1968年までポルトガルの首相を務めた敬虔なカトリック教徒のサラザル博士と対比してみてください. 彼は, 生活, 政治, 経済とは単に黄金の砂浜に安く飛べるようにするだけが目的ではないと知り, 自国のために, とりわけ国際的銀行業者から「たとえ生活が貧しかろうと独立する」道を選んだのです. 堕落したマスメディアは即座に彼に「国粋主義の独裁者」という汚名を着せましたが, ポルトガル国民は喜んで彼に従ったのです. 何故なら, ファティマの奇跡(1017年)により彼らのカトリック信心が復興したことが, そもそもサラザルを首相の座につけることになったからです.

だが, 彼が亡くなってからわずか16年後にポルトガルは欧州共同体に加盟しました. 今日の世界における神の敵対者たちの前進は, まことに情け容赦もない冷酷無情そのものです. 反キリストに向かって進んでいく彼らの行く手に抵抗しようとするいかなる試みも, 寄せ波に抵抗している砂の城のように次第に切り崩されるばかりです. もし城がサラザルのポルトガルのようにしっかりと造られていれば, しばらくは持ちこたえるでしょうが, やがては洗い流そうとする波のなかに全部消えてしまうでしょう. かくして全欧州は自らを神のない新世界秩序の中に封じ込め, サッカーや海水浴に興じているというわけです!

哀れな欧州!もし, かつてなく強くなったブリュッセルの欧州政府の内部において, 「表向きの体裁や見かけ倒しの虚飾, そしていかに欧州連合が素晴らしくかつ必要欠くべからざる存在であるかを物語る出版物の雪崩の裏側で」本当は何が起きているのかを知りたかったら, info@stewardspress.co.uk で, 欧州議会議員(MEP)のマルタ・アンドレアセン夫人が簡潔にまとめた著書「暴かれたブリュッセル(原題“Brussels Laid Bare”by Marta Andreasen)」を注文して一読すべきです. 欧州連合に2002年1月から首席会計士として採用され, 連合全体の予算についての責任を一任された彼女は, すぐに同連合の財政体制全体に及ぶ大がかりな悪政ぶりにぶつかり, 職業上, 上手く波長を合わせて同調していくことなどとてもできなかったと言っています. 彼女は急速に孤立して信用を傷つけられ, それから5か月も経たないうちに職務を正しく遂行しようとしたために解雇されたのです.

彼女は, 自身の実体験をもとに, ブリュッセルは「無法状態で, 腐敗しており, 間違いだらけで,非民主的, 官僚的かつ過剰統制的で, 結局は運営不可能」な余計な政府だと書いています. こういうことは, 欧州連合に事実上何の説明責任もないことに起因していると彼女は指摘しています. 彼女は, 欧州連合が御しやすい腐敗した公務員を重用したがる使用者たちを隠蔽してしまったのではないかと感じたのではないでしょうか? 彼女の本には, そうした疑念を思わせる痕跡は何も見当たりません. 彼女は欧州議会議員として戦い続ける決心を公言しています. だが, 悲しいかな, 不誠実な欧州には彼女のような人物はもうこれ以上ふさわしくありません. しかし, もし彼女が戦い続けるなら, 何らかの形で, 必要とあれば子供の世代まで含めて押し潰される危険を冒すことになるでしょう.
キリエ・エレイソン.

英国ロンドンにて
リチャード・ウィリアムソン司教